介護保険外サービスとは?種類・費用・選び方をケアマネが解説

母が最近、「毎食、食事を作るのが大変」と言うようになりました。
通院にも付き添いたいのですが、平日に何度も仕事を休むのは難しくて……。介護保険で頼めないことは、どこに相談すればよいのでしょうか。

介護保険では対応できない支援でも、介護保険外サービスなら頼める場合があります。
家事や見守り、通院の付き添いなど、必要な支援を保険制度ではなく自費で利用するというものです。
介護保険外サービスとは、介護保険の給付対象にならない支援を、利用者と事業者との契約にもとづいて自費で利用するサービスのことです。介護保険では時間や内容に制限がある支援を補ったり、要介護認定を受けていない親の暮らしを支えたりする手段として使われています。
この記事では、介護保険サービスとの違い、主なサービスの種類、利用する場面、費用の決まり方、事業者の選び方、利用開始までの流れを順に説明します。親の困りごとをサービスの種類ごとに整理し、次に何を調べ、どこへ相談すればよいかが分かるように詳しく解説していきます。
介護保険外サービスとは
介護保険外サービスは、「保険外サービス」「自費サービス」とも呼ばれます。厚生労働省は、介護保険給付の対象にはならないものの高齢者のニーズに対応するサービスを「保険外サービス」と位置づけ、介護保険サービスとあわせて充実させることが重要だとしています。
保険外サービスを提供しているのは、訪問介護や訪問看護を運営する事業所、看護師や理学療法士などの専門職が立ち上げた事業者、家事代行会社、配食業者、タクシー会社など、さまざまです。また、料金やサービス内容は国が一律に定めたものではなく、事業者ごとに決められています。
介護保険サービスとの違い
介護保険サービスと介護保険外サービスの違いは、「誰が内容と料金を決め、誰が費用を負担するか」です。
介護保険サービスは、要介護認定を受けた人がケアマネジャーの作成するケアプランにもとづいて利用します。サービスの内容や報酬は制度で定められており、利用者が支払うのは費用の1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)です。ただし、在宅で使えるサービス量には要介護度ごとに月の上限(区分支給限度基準額)があり、上限を超えた分は全額自己負担になります。
また、介護保険は本人の自立支援を目的としているため、訪問介護(ホームヘルプ)では、本人以外の家族のための家事、草むしりやペットの世話、趣味の外出への付き添いといった支援は、対象外です。
これに対して介護保険外サービスは、利用者と事業者が個別に契約し、内容・時間・料金を話し合って決めます。費用は全額自己負担ですが、介護保険の対象外となる支援や、上限を超える時間の支援も依頼でき、その人らしい生活を支援するには欠かせないサービスとも言えます。また、保険外サービスを受ける際に必ずしもケアプランは必要ではないため、ケアマネジャーの事業所や地域包括支援センターと契約をしていなくても利用することができます。
| 比較する点 | 介護保険サービス | 介護保険外サービス |
|---|---|---|
| 利用の前提 | 要介護・要支援認定 | 事業者との契約 |
| 内容 | 制度で定められた範囲 | 事業者と相談して決める |
| 自己負担 | 原則1~3割 | 全額 |
| 料金 | 制度で定められた単価 | 事業者ごとに異なる |
両者はどちらか一方を選ぶものではなく、組み合わせて使うこともできます。
要介護認定がなくても利用できる
介護保険外サービスの多くは、直接事業者と契約することで利用することができるため、要介護認定を受けていなくても申し込めます。そのため、要介護認定を受けた人だけにとどまらず、「まだ介護が必要というほどではないが、重い物の買い物や電球の交換が難しくなってきた」という段階の方でも使える支援です。
ただし、事業者によっては、利用者の健康状態によって受けられない支援があったり、医療的なケアを伴う場合に主治医の意見を求められたりすることがあります。また、市区町村が独自に実施する高齢者向けサービスには、年齢や世帯状況などの利用条件が設けられている場合があります。認定が不要であることと、誰でも同じ内容を利用できることとは別なので、申し込み前に条件を確認しておくと安心です。
介護保険外サービスの主な種類
介護保険外サービスの範囲は広く、看護やリハビリのように専門職が担うものから、家事や配達のような生活に身近なものまで含まれます。ここでは、「わたしのケア」で扱う主なサービスを3つのグループに分けて紹介します。
自費訪問看護・看護師同行
自費訪問看護は、看護師が自宅を訪問し、健康状態の確認や療養上の世話などを行うサービスです。医療保険や介護保険の訪問看護では回数や時間に制限がありますが、自費であれば長時間の見守りや、家族が不在になる日の支援などを受けられます。
看護師同行サービスは、通院や外出、冠婚葬祭、旅行などに看護師が付き添うものです。移動中の体調変化への対応や服薬の確認などが必要な人に利用されています。
いずれも医療に近い領域のため、どこまでのケアに対応できるか、主治医の指示が必要かどうかは、事業者の体制やサービス内容、本人の状態などによって異なります。
生活支援・見守り
生活支援サービスは、掃除、洗濯、調理、買い物の代行や同行など、日常の家事を支えるものです。介護保険の訪問介護では対象外となる、同居家族の分の家事、庭の手入れ、ペットの世話、大掃除などを依頼できる事業者もあります。
見守りサービスには、定期的な訪問や電話で安否を確認するもの、センサーや家電の使用状況から異変を知らせるもの、緊急時の通報に対応するものなどがあります。
訪問理美容・配食・介護タクシー・宅配
外出が難しい人の自宅や施設に理容師・美容師が訪れる訪問理美容、食事を届ける配食サービス、車いすやストレッチャーのまま乗車できる介護タクシー、食料品や日用品を届ける宅配スーパーなども、介護保険外サービスに含まれます。
このうち介護タクシーは、運賃そのものは介護保険の対象外ですが、一定の要件を満たし、ケアプランに位置づけられた訪問介護の「通院等乗降介助」に該当する場合は、乗降介助などの部分に介護保険が適用されることがあります。
配食サービスや訪問理美容については、自治体が独自に費用を助成していることもあるため、住まいの市区町村の情報もあわせて確認するとよいでしょう。

どのような場面で利用するのか
介護保険外サービスが役立つのは、主に次のような場面です。
ひとつ目は、介護保険の対象外となる支援が必要な場面です。親と同居している家族の分の食事づくり、庭の草むしり、趣味の集まりへの付き添い、病院内での長時間の付き添いなどがこれにあたります。厚生労働省の通知でも、訪問介護の前後に草むしりやペットの世話、同居家族の部屋の掃除などを保険外サービスとして提供できる例が示されています。
ふたつ目は、介護保険の上限や時間の枠を超えて支援が必要な場面です。退院直後で数日間は長時間の見守りがほしい、夜間に誰かいてほしいといった状況では、保険のサービスだけでは時間が足りないことがあります。
3つ目は、要介護認定を受けていない、または認定の結果を待っている段階です。生活上の困りごとは少しずつ増えているものの、介護保険の対象になるかどうかが分からない時期に、必要な部分だけを利用する方法があります。
4つ目は、家族の都合で支援が途切れる場面です。遠方に住んでいて通院に付き添えない、出張や冠婚葬祭で数日家を空ける、といった事情にも、保険外サービスで対応できることがあります。
ケアマネジャーの視点からアドバイス
家族が支援を抱え込んでいると、「どのサービスを頼めばよいか」を考える余裕がないまま、限界に近づいてしまうことがあります。それでは、ご本人にも、ご家族にも決して良い未来はありません。また、介護保険制度だけですべてを賄おうとするのは無理があります。限界が来る前に、誰かに相談することはとても大切なことです。
相談の前に、困りごとを「医療(体調管理・服薬・受診)」「外出(通院・買い物・趣味)」「家事(掃除・調理・洗濯)」「見守り(安否確認・急変時の対応)」の4つに分けて書き出してみてください。同じ「最近大変そう」という状況でも、分けてみると、看護師が必要なのか、家事の手があれば足りるのかが見えてきます。また、書き出したメモは、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談するときにもそのまま使えます。
費用はどのように決まるのか
介護保険外サービスの料金には統一された価格がなく、事業者が自由に設定しています。そのため、同じ「1時間の生活支援」でも、事業者や地域によって金額が異なります。また、料金を比べるときは、1時間あたりの単価だけでなく、総額を左右する条件を確認する必要があります。
料金を決める主な要素には、次のようなものがあります。
- 担当者の資格(看護師、理学療法士、介護職員など)
- 利用時間と最低利用時間
- 利用する時間帯(早朝・夜間・休日の割増)
- 交通費や出張費
- 入会金・登録料・事前面談の費用
- キャンセル料や延長料金
担当者の資格や支援内容によって料金は異なります。また、「1回2時間から」のように最低利用時間が決まっている場合、実際に必要なのが1時間でも2時間分の料金がかかります。交通費を実費で請求するか、定額で含めるかも事業者によって違います。
費用の見通しを立てるには、同じ条件(依頼内容、時間帯、時間、頻度)を伝えて、複数の事業者から見積もりを取るのが確実です。料金表に載っている金額と、実際に支払う総額が異なることもあるため、税込か税別か、どの費用が含まれているかを書面で確認しておくとよいでしょう。
なお、介護保険サービスの利用料と異なり、介護保険外サービスの費用は高額介護サービス費などの負担軽減制度の対象にはなりません。継続して利用する場合は、月あたりの支出がどの程度になるかを家族で話し合っておくことをおすすめします。

失敗しない選び方
介護保険外サービスは、事業者ごとに内容や体制が大きく異なります。料金の安さだけで選ぶと、「頼みたい支援に対応していなかった」「担当者が急に来られなくなった」といった行き違いが起こりやすくなります。選ぶときは、次の点を確かめておくと比較しやすくなります。
最初に確認するのは、依頼したい内容に対応しているかどうかです。「生活支援」と書かれていても、調理はするが通院の付き添いはしない、庭仕事は対象外、といった違いがあります。できることと同じくらい、できないことを事前に聞いておき、希望している支援が受けられるかだけでなく、今後希望するかもしれないことまでイメージして確認しておくことが大切です。
次に、担当者の資格と体制です。医療的なケアが必要な場合は、看護師などの有資格者が担当するのか、主治医との連携をどう取るのかを確認します。また、担当者が休んだときに決まった日時に代わりの人が来られるかどうかも、継続して利用するうえで重要なポイントです。
さらに、事故や急変時の対応です。サービス中に事故が起きた場合の賠償保険への加入状況、体調が急に悪化したときの連絡の流れ、家族への報告方法を確認しておくと、万一のときに慌てずに済みます。
最後に、契約内容です。料金、キャンセルの期限、解約の方法、個人情報の取り扱いが書面で示されているかを確認します。厚生労働省の通知でも、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせる事業者には、保険外サービスの内容や料金を文書で説明して利用者の同意を得ること、苦情を受け付ける窓口を設けることなどが求められています。説明が口頭だけで済まされる場合は、書面での提示を依頼しましょう。

利用開始までの流れ
介護保険外サービスは、申し込めばすぐに始められる場合もありますが、多くは相談から契約まで何段階かを経て利用が始まります。一般的な流れは次のとおりです。
- 困りごとと希望を整理する
- ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する(介護認定を受けていない場合は直接事業者に相談することも可)
- 事業者を探して問い合わせる
- 面談で内容・料金を確認し、見積もりを受け取る
- 契約書や重要事項の説明を受けて契約する
- 利用を開始し、様子を見て内容を見直す
まず、どの場面で、どのくらいの時間、どんな支援が必要なのかを書き出します。本人がどう感じているか、本人の希望を聞いておくことも欠かせません。家族が必要だと思っても、本人が知らない人の訪問を嫌がる場合もあるためです。
そして、すでに介護保険を利用している場合はケアマネジャーへ、まだ利用していない場合は住まいの地域を担当する地域包括支援センターへ行うのが一般的ですが、必ずしも必要でないこともあります。
地域包括支援センターは市町村が設置する相談窓口で、介護保険の申請や地域の生活支援サービスについても案内を受けられます。すでに介護保険を利用している場合に保険外サービスを追加する場合、事業者からケアマネジャーへ内容や時間が報告され、ケアプランに記載されることもあるため、先に伝えておくと調整がしやすくなります。
また、同じ事業者に介護保険サービスと保険外サービスの両方を頼む場合、それぞれの契約・料金は別になります。保険外サービスの時間は介護保険サービスの時間とは別に扱われ、請求も別に行われます。
利用を始めたから安心ではありません。実際に使ってみると、時間が足りない、逆に頼む必要がなかった、ということが判明することもあります。最初の1~2か月は、本人や担当者から様子を聞き、内容や頻度を調整するとよいでしょう。
よくある質問
Q.介護保険サービスと介護保険外サービスを同じ日に使えますか。
使えます。厚生労働省の通知では、訪問介護の前後や、訪問介護を一旦中断した合間に保険外サービスを提供できることが示されています。ただし、両者は明確に区分する必要があり、たとえば本人分と同居家族分の料理を同時に作るように、保険サービスと保険外サービスを同時に一体として提供することは認められていません。
Q.費用は医療費控除の対象になりますか。
サービスの内容や提供者によって扱いが異なるため、一律には言えません。対象になるかどうかは、税務署や税理士、事業者に確認してください。
Q.自治体の助成は使えますか。
見守り機器、配食、訪問理美容などについて、独自の助成や割引を設けている自治体があります。内容や条件は地域によって大きく異なるため、市区町村の窓口や地域包括支援センターで確認してください。
Q.親が利用を嫌がる場合はどうすればよいですか。
いきなり毎週の利用を決めるより、困りごとが大きい一場面だけを試してみてはどうでしょうか。「通院の日だけ」「大掃除のときだけ」のように範囲を限ると、本人も受け入れやすくなることがあります。本人の気持ちを確認しながら、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談してみてください。
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投稿者プロフィール

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寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。
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