介護保険サービスと保険外サービスは併用できる?違いと使い分け

息子さん

母はヘルパーさんに週2回来てもらっていますが、それだけでは足りなくて。

ついでに庭の草むしりや、私の部屋の掃除も頼めたらと思うんですが、介護保険と自費のサービスって一緒に使えるんですか。

ケアマネジャー

で介護保険と自費サービスは併用できます。介護保険の訪問介護の前後や合間に、保険外のサービスとして草むしりやご家族の部屋の掃除を頼む方法は、国の通知でも例として示されています。

ただし、二つのサービスを明確に分けることが条件です。

息子さん

分けるというのは、どういうことですか。

同じヘルパーさんにお願いしたら、料金はどうなるんでしょう。

ケアマネジャー

契約も請求も時間も、保険の分と自費の分を別々に扱います。

どこに気をつければよいか、ケアプランとの関係も含めて順番に確認していきましょう。

介護保険サービスと保険外サービスは、組み合わせて利用することができます。介護保険で対応できる支援は保険で利用し、対象外の支援や、利用限度額を超える部分を保険外のサービスで補うという考え方です。一方で、両者を同時に一体として提供することは認められておらず、契約、会計、記録を分けることが求められています。

この記事では、両者の目的・対象・費用の違い、併用しやすい利用場面、同じ事業者が両方を提供する場合の注意、契約・会計・記録の確認のしかた、ケアマネジャーへの相談で伝えること、組み合わせを考える手順を説明します。介護保険と保険外サービスの役割を分けて、必要な支援を組み合わせて相談するための参考にしてください。

介護保険と保険外サービスは併用できる

介護保険制度では、一定の条件のもとで、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供することが認められています。厚生労働省は2018年(平成30年)に取扱いを示す通知を出しており、現在の同省資料でもこの通知にもとづく適切な運用が求められています。

この通知では、たとえば訪問介護の前後や提供時間の合間に、草むしりやペットの世話、同居家族の部屋の掃除や買い物などを、保険外サービスとして提供できる例が挙げられています。また、訪問介護として外出の支援をした後に、引き続き趣味や娯楽のために立ち寄る場所へ同行することや、通院の際に、介護報酬の対象とならない院内での介助を保険外で続けて提供することも例として示されています。

ただし、併用には守るべきルールがあります。通知では、保険外サービスを介護保険サービスと明確に区分することを求めており、本人分と同居家族分の料理を同時に作るように、両方を同時に一体として提供することは認めていません。また、特定のヘルパーを指名するための料金や、混み合う時間帯を指定するための上乗せ料金を、利用者の自費で徴収することも認めていないとしています。

なお、この通知は国が自治体に示した技術的な助言であり、実際の運用については自治体によって差が見られるとの指摘もあります。個別の組み合わせ方については、ケアマネジャーや事業者、必要に応じて市区町村に確認してください。

両者の目的・対象・費用の違い

介護保険サービスと保険外サービスは、目的、対象、費用の考え方が異なります。この違いを理解しておくと、どの支援をどちらで頼むのかを整理しやすくなります。

介護保険サービスは、高齢者が尊厳を保ち、持っている能力に応じて自立した日常生活を送れるよう支えることを目的としています。要介護・要支援の認定を受けた人が、ケアマネジャーの作成するケアプランにもとづいて利用します。訪問介護(ホームヘルプ)では、食事や排せつ、入浴などの身体介護と、掃除や洗濯、買い物、調理などの生活援助が行われますが、利用者の家族のための家事や来客の対応、草むしり、ペットの世話、大掃除、窓のガラス磨き、正月の準備などは、サービスの対象外とされています。利用者の負担は費用の1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)で、在宅のサービスには要介護度ごとに月の利用限度額があり、限度額を超えた分は全額自己負担になります。

保険外サービスは、介護保険の給付の対象にはならないものの、高齢者のニーズに対応するサービスです。利用者と事業者の契約にもとづき、内容や時間、料金を話し合って決めます。要介護認定は必要なく、費用は全額自己負担です。料金は事業者ごとに設定されています。

介護保険サービスと保険外サービスを、目的、利用の前提、対象となる支援、費用、料金で左右に比較し、明確に区分すれば併用できることを示した図

併用しやすい利用場面

介護保険サービスと保険外サービスの併用は、次のような場面で検討されることが多いです。

介護保険の時間外・対象外を補う

最も多いのは、介護保険の訪問介護では対象外とされている支援を、保険外のサービスで補う使い方です。ヘルパーの訪問の前後に、同居家族の部屋の掃除、家族のための買い物、草むしり、ペットの世話などを保険外で依頼します。

要介護度ごとの利用限度額の範囲では、必要な支援の時間が足りない場合にも、保険外のサービスで補うことができます。この場合、厚生労働省の通知では、限度額を超えて介護保険サービスと同じ内容のサービスを提供するときの料金は、介護保険で事業者に支払われる費用と同じ水準にすることが望ましいとされています。ただし、違いを文書で説明して利用者の同意を得れば、別の料金を設定することもできるとされています。

家族不在時や長時間の支援

家族が出張や冠婚葬祭で家を空ける日や、退院直後で目を離しにくい時期には、介護保険のサービスだけでは時間が足りないことがあります。こうした場面では、介護保険の訪問介護や訪問看護に加えて、保険外の見守りや長時間の付き添い、自費の訪問看護を組み合わせる方法があります。

保険の訪問看護は、主治医の指示にもとづいて提供され、回数や時間に決まりがあります。その枠を超える長時間の見守りや療養の支援は、自費の訪問看護で補うことができます。医療的なケアを含む場合は、主治医の指示の有無や事業者の方針によって対応できる範囲が異なるため、事前の確認が必要です。

趣味・旅行・家族分の家事

介護保険は本人の自立支援を目的としているため、趣味や娯楽のための外出、旅行への付き添い、家族分の家事などは、保険の対象にならない支援です。

厚生労働省の通知では、訪問介護として外出の支援をした後に、引き続き本人が趣味や娯楽のために立ち寄る場所に同行することを、保険外サービスとして提供できる例として挙げています。お墓参りや家族の行事への参加、趣味の集まりへの外出など、本人の生活の楽しみを支える支援は、保険外のサービスが力を発揮しやすい場面です。

同じ事業者が両方を提供する場合の注意

訪問介護事業所の中には、介護保険の訪問介護と、保険外の生活支援の両方を提供しているところがあります。同じ事業者に両方を頼むと、顔なじみのヘルパーが続けて支援してくれるなどの利点がありますが、次の点に注意が必要です。

一つ目は、同時に一体として提供することはできないという点です。たとえば、本人の食事と家族の食事を同時に作る場合、どこまでが介護保険でどこからが保険外なのかを区別できません。そのため、通知では、訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することは認めていません。保険外のサービスは、訪問介護の前後に続けて提供するか、訪問介護をいったん中断して提供し、その後に訪問介護を再開する形になります。

二つ目は、切り替えのタイミングを本人が分かるようにすることです。通知では、利用者の認知機能が低下しているおそれがあることを踏まえ、訪問介護と保険外サービスを切り替えるタイミングを丁寧に説明するなど、別のサービスであることを利用者が認識できるよう工夫することを事業者に求めています。

三つ目は、保険外サービスの時間は、訪問介護の提供時間に含めないという点です。訪問介護が1時間、保険外の支援が30分であれば、それぞれを別に記録し、別に請求しする必要があります

四つ目は、指名料や時間指定料を支払っても、特定のヘルパーに来てもらったり、混み合う時間帯を優先してもらったりすることはできないという点です。通知では、こうした上乗せ料金を利用者の自費で徴収することは認めていません。

訪問介護と保険外サービスを前後や合間に分けて提供する例は認められ、同時一体的な提供は認められないことを時間の流れで示した図

契約・会計・記録を分けて確認する

厚生労働省の通知では、訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する事業者に対して、次のようなことを求めています。利用する側も、これらが守られているかを確認しておくと安心です。

まず、保険外サービスの事業の目的、運営方針、利用料などが、訪問介護の運営規程とは別に定められていることです。

次に、契約の際に、保険外サービスの概要や重要な事項を記した文書で丁寧に説明を受け、保険外サービスの内容、提供時間、利用料について同意することです。口頭での説明だけで保険外の支援が始まっていないかを確認してください。

さらに、訪問介護の利用料とは別に請求され、会計も分けられていることです。毎月の請求書で、介護保険の利用者負担分と、保険外サービスの料金が区別して記載されているかを確認しましょう。

あわせて、保険外サービスについての苦情を受け付ける窓口が設けられていることも確認しておきたい点です。

個人情報についても注意が必要です。通知では、介護保険サービスを提供する際に取得した個人情報を保険外サービスの提供に利用する場合は、取得の際にあらかじめ利用目的を公表するなどの措置が必要であるとしています。契約の際に、個人情報をどのような目的で使うのかを確認してください。

ケアマネジャーへ相談するときに伝えること

保険外サービスを利用する場合は、担当のケアマネジャーにも伝えておくことが大切です。厚生労働省の通知では、事業者は契約の前後に、利用者の担当のケアマネジャーに保険外サービスの内容や提供時間などを報告することとされ、ケアマネジャーは必要に応じて、その情報をケアプランの週間サービス計画表に記載することとされています。

家族からも、次のような情報をケアマネジャーに伝えておくと、介護保険のサービスと保険外のサービスの組み合わせを一緒に考えてもらいやすくなります。

一つは、いまのケアプランで足りないと感じている場面と時間帯です。「夕方にトイレの介助が必要なときに誰もいない」「週末の食事の準備ができない」のように、具体的に伝えます。

二つ目は、保険外サービスで頼みたい内容と、検討している事業者です。すでに見積もりを受け取っている場合は、内容を見せて相談します。

三つ目は、費用の上限です。保険外のサービスは全額自己負担のため、毎月どのくらいまでなら負担できるかを伝えておくと、現実的な組み合わせを考えやすくなります。

ケアマネジャー視点のアドバイス

保険外サービスの相談では、「自費でもいいからもっと来てほしい」という形で話が始まることがあります。けれども、保険外のサービスを加える前に確かめたいのは、いまのケアプランのどの場面、どの時間帯が足りていないのかです。

一週間の生活を曜日と時間帯で書き出し、介護保険のサービスが入っている時間、家族が対応できる時間、誰もいない時間を色分けしてみてください。足りない部分が見えると、介護保険のサービスの組み方を見直せば対応できるのか、保険外のサービスで補う必要があるのかを判断しやすくなります。書き出した表を持って相談していただければ、ケアマネジャーも保険と保険外の役割分担を一緒に考えやすくなります。

組み合わせを考える手順

介護保険サービスと保険外サービスの組み合わせは、一般的に次のような手順で考えます。

  1. いまの生活で足りない場面と時間帯を書き出す
  2. ケアマネジャーに相談し、介護保険で対応できる部分を確認する
  3. 介護保険で対応できない部分を、保険外で頼む内容として整理する
  4. 保険外サービスの事業者に見積もりを依頼する
  5. 契約の内容(区分・料金・請求)を確認して契約する
  6. 事業者からケアマネジャーへ内容を報告してもらい、ケアプランと合わせて利用する
  7. 利用を始めた後、定期的に組み合わせを見直す

ケアマネジャーに相談し、介護保険のサービスの組み方を変えることで対応できる場合もあります。保険外のサービスを加えるのは、その上で足りない部分があるときと考えると、費用の負担を抑えやすくなります。

保険外サービスの利用開始後は、親の状態の変化に合わせて、保険と保険外の役割分担を調整します。要介護度が変わった場合や、入院や退院をした場合は、組み合わせ全体を見直す良い機会です。

介護保険と保険外サービスを組み合わせる7つの手順を、足りない場面の書き出しから定期的な見直しまで示し、各段階の関係者を添えた手順図

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投稿者プロフィール

わたしのケア編集部
わたしのケア編集部
寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。