介護保険外サービスの選び方|契約前に確認したい10項目

家族

母の家事を手伝ってくれる事業者を、2社まで絞ったんです。

料金は片方が少し安いんですが、それだけで決めてしまっていいのか迷っていて。

ケアマネジャー

料金は大切な比較の材料です。ただ、それだけで決めると、担当の方が休んだ日に誰も来なかったり、事故が起きたときの対応が決まっていなかったりと、使い始めてから困ることがあります。

家族

ホームページを見ても、どこも『安心』『丁寧』と書いてあって、違いが分からないんです。

何を聞けばいいんでしょう。

ケアマネジャー

同じ質問を両方の事業者にして、答えを並べてみるのがいちばん確かです。

契約の前に確認しておきたいことを10項目に整理したので、順番に見ていきましょう。

介護保険外サービスは、利用者と事業者の契約にもとづくサービスです。介護保険サービスのように国が内容や料金を一律に定めているわけではないため、事業者によって、提供できる内容、担当者の体制、事故や緊急時の対応、料金や解約の条件が大きく異なります。だからこそ、契約の前に同じ基準で比べることが大切です。

この記事では、料金だけで選ぶと判断を誤りやすい理由、契約前に確認したい10項目、初回相談で伝える情報、注意したい説明や契約の例、比べても決めきれないときの相談先を説明します。候補の事業者を同じ基準で比べ、契約や事故、キャンセルなどのリスクを確認するための参考にしてください。

料金だけで選ぶと判断を誤りやすい理由

介護保険外サービスを比べるとき、最初に目に入るのは料金です。しかし、料金だけで事業者を選ぶと、いくつかの点を見落としやすくなります。

一つは、料金表の金額と実際に支払う総額が一致しないことです。最低利用時間、時間帯による割増、交通費、初回の費用、キャンセル料などによって、1時間あたりの単価が安くても、総額では高くなることもあります。

もう一つは、料金の差が、体制の差を反映していることがあります。担当者の資格、交代できる職員の人数、緊急時に連絡がつく体制、賠償責任保険への加入などには、それぞれ費用がかかります。料金が安い理由が、こうした体制を簡略にしていることにある場合、利用を始めてから不便や不安を感じることがあります。

さらに、高齢の親を支えるサービスは、一度始めると長く続くことが多いものです。担当者との相性や、報告の丁寧さ、体調の変化への気づきなど、料金では比べられない要素が、続けやすさを大きく左右します。

料金は大切な比較の材料ですが、それは10項目の中の一つとして確認するものだと考えてください。

契約前に確認したい10項目

ここからは、契約前に確認したい項目を10に分けて説明します。候補の事業者それぞれに同じ質問をし、答えを書き留めておくと、比べやすくなります。

運営主体・対応地域・提供時間

1.運営主体

最初に確認したいのは、サービスを運営しているのがどのような法人・団体なのかです。会社名や代表者、所在地、連絡先、設立からの年数、ほかにどのような事業を行っているかを確認します。訪問介護事業所や訪問看護ステーションを運営している法人が保険外のサービスも提供している場合は、介護保険の事業での経験がどのように生かされているかも聞いてみるとよいでしょう。ホームページに運営者の情報が見当たらない場合は、問い合わせて確認してください。

2.対応地域と提供時間

親の住まいが対応地域に入っているかを確認します。対応地域の端にあたる場合は、交通費が加算されたり、急な依頼に対応しにくかったりすることがあります。あわせて、サービスを提供できる曜日と時間帯、早朝や夜間、土日祝日、年末年始に対応できるかを確認します。

担当者の資格・経験・交代体制

3.担当者の資格と経験

担当する人がどのような資格を持っているかを確認します。看護師、介護福祉士、介護職員初任者研修の修了者、理学療法士など、依頼する内容によって必要な資格は異なります。医療的なケアや身体の介助を依頼する場合は、資格の有無が特に重要です。資格とあわせて、高齢者への支援の経験や、親と同じような状態の人への対応経験があるかも聞いておきましょう。

4.担当者の交代体制

担当者が固定されるのか、訪問のたびに変わる可能性があるのかを確認します。さらに、担当者が体調不良や休暇で来られない日に、代わりの人が来られるのか、それともその日のサービスは中止になるのかを確認してください。少人数で運営している事業者では、代わりの人がいない場合もあります。

ケアマネジャー視点のアドバイス

事業者を比べるとき、家族は担当者の資格に目を向けることが多いのですが、実際に利用を始めてから差が出やすいのは、資格以外の体制です。

担当者が休んだときに誰が来るのか、サービス中に事故が起きたら誰がどの順番で連絡するのか、訪問の後に家族へどのような方法で様子を伝えてくれるのか。この3つを、候補の事業者すべてに同じ言葉で質問してみてください。

答えが具体的で、書面でも示してもらえれば、利用開始後の行き違いを減らしやすくなります。答えがあいまいな場合は、契約前にもう一度確認することをおすすめします。

サービス範囲・できないこと

5.提供できる内容と、できないこと

依頼したい支援に対応しているかを確認します。このとき、できることと同じくらい、できないことを聞いておくことが大切です。「生活支援」と書かれていても、調理はするが庭仕事はしない、付き添いはするが医療的なケアはしない、といった違いがあります。高所の作業や大型家具の移動など、安全上の理由で断られる作業もあります。

医療的なケアを依頼する場合は、主治医の指示が必要な場合が多く、主治医とどのように連携するのかも確認します。介護保険のサービスをすでに利用している場合は、保険のサービスとの役割分担や、同じ事業者に両方を頼むときの契約と請求の分け方も確認しておきましょう。

事故・賠償・緊急時対応

6.事故と賠償

サービス中に利用者がけがをした場合や、家財を壊してしまった場合に備えて、事業者が賠償責任保険に加入しているかを確認します。事故が起きたときの報告の方法と、補償の手続きの流れも聞いておきましょう。

7.緊急時の対応

サービス中に体調が急変した場合の対応手順を確認します。救急車を呼ぶ判断を誰がするのか、主治医や家族にどの順番で連絡するのか、夜間や休日にも事業者に連絡がつくのかを確認します。外出や旅行への同行を依頼する場合は、外出先で体調が悪くなったときの対応も確認が必要です。

料金・キャンセル・解約

8.料金の内訳と総額

料金体系(時間制・回数制・月額制)、最低利用時間、時間帯による割増、交通費、初回の費用、税込か税別かを確認し、実際に利用する条件での1回あたり・1か月あたりの総額を見積もってもらいます。介護保険のサービスとあわせて利用する場合は、保険外の料金が別に定められ、別に請求されるかも確認します。

9.キャンセルと解約の条件

キャンセル料がいつから、いくらかかるのか、体調不良による当日の取りやめはどう扱われるのかを確認します。回数券や月額プランの場合は、有効期限、途中で利用できなくなったときの返金、解約の手続きと違約金の有無を確認してください。高齢の親の場合、入院などで長期間利用できなくなることもあるため、その場合の扱いも聞いておくと安心です。

個人情報・家族への報告

10.個人情報の取り扱いと家族への報告

親の病名や生活の様子、自宅の鍵、家族の連絡先など、保険外のサービスでも多くの個人情報を事業者に預けることになります。個人情報をどのような目的で使い、誰と共有するのか、どのように管理するのかを確認します。ケアマネジャーや主治医と情報を共有する場合は、その範囲も事前に確認しておきます。

あわせて、訪問や同行の後に、家族へどのような方法で報告してくれるのかを確認します。電話、メッセージ、報告書など、報告の方法と内容、頻度を事前に決めておくと、離れて暮らしていても親の様子を把握しやすくなります。

介護保険外サービスの契約前に確認したい10項目を、運営主体、担当者、サービス範囲、事故・緊急時、料金・契約、情報と報告の6つに分けたチェックリスト

初回相談で伝える情報

事業者に初めて相談するときは、確認するだけでなく、こちらから伝える情報も準備しておくと、見積もりや提案が的確になります。

本人の状態については、年齢、要介護認定の有無と要介護度、病名や既往歴、服用している薬、必要な医療的ケア、移動や食事、排せつの状況、認知症の有無などを伝えます。

依頼したい内容については、どのような場面で、どのような支援を、どのくらいの頻度と時間で頼みたいのかを具体的に伝えます。「家事全般」「付き添い」といった大まかな言葉ではなく、「浴室の掃除を週1回」「病院の受付から会計までの付き添い」のように伝えると、事業者は必要な時間や人員を見積もりやすくなります。

生活の状況については、同居の家族の有無、主な連絡先となる家族、すでに利用している介護保険のサービスや担当のケアマネジャー、自宅の鍵の管理方法などを伝えます。

本人の希望も大切な情報です。本人が手伝ってほしいこと、自分で続けたいこと、苦手なことや嫌がることを伝えておくと、担当者が本人に合った関わり方を考えやすくなります。

注意したい説明・契約の例

多くの事業者は誠実に説明してくれますが、次のような説明や契約の内容には注意が必要です。契約の前に立ち止まって確認し、必要であれば家族やケアマネジャーに相談してください。

一つ目は、効果や結果を約束する説明です。「必ず歩けるようになる」「絶対に安心」といった表現は、本人の状態によって結果が変わる支援については、根拠を確かめる必要があります。

二つ目は、契約を急がせる説明です。「今日契約すれば割引になる」「空きが少ないので今決めてほしい」と言われても、条件を十分に確認できないまま契約することは避けましょう。

三つ目は、口頭での説明だけで、書面が示されない場合です。厚生労働省の通知では、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する事業者に対し、保険外サービスの内容や提供時間、料金などを、重要事項を記した文書で丁寧に説明し、利用者の同意を得ることを求めています。保険外のサービスだけを提供する事業者にもこの通知がそのまま当てはまるわけではありませんが、料金やキャンセル、解約の条件が書面で示されているかどうかは、どの事業者を選ぶ場合でも確認したい点です。

四つ目は、高額な前払いや、解約・返金の条件が分かりにくい契約です。長期間分の料金をまとめて支払う契約や、回数券を大量に購入する契約は、途中で利用できなくなった場合の返金の扱いを必ず確認してください。

五つ目は、依頼していないサービスや商品を勧められる場合です。本人にとって必要かどうかを家族と一緒に検討してから判断しましょう。キャッシュカードや暗証番号を預けるよう求められた場合も、慎重に対応する必要があります。

介護保険外サービスの契約時に注意したい5つの説明と、それぞれの場面で確認したいことを対にして示した図

比較後に決めきれないときの相談先

10項目を確認しても、どの事業者にするか決めきれないことがあります。そのようなときは、一人で抱え込まずに、次のような相談先を活用してください。

介護保険を利用している場合は、担当のケアマネジャーに相談するのが身近な方法です。親の状態や、すでに利用している介護保険のサービスを踏まえて、保険外のサービスをどのように組み合わせるとよいかを一緒に考えてもらえます。事業者から受け取った見積もりや説明の資料を見せると、確認が足りない点に気づいてもらえることもあります。

介護保険を利用していない場合や、要介護認定を受けていない場合は、親の住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談できます。地域包括支援センターは市町村が設置する相談窓口で、高齢者に関するさまざまな相談を受け、適切な機関や制度、サービスにつなぐ役割を担っています。地域の生活支援サービスの情報を持っていることもあります。

契約の内容や、事業者とのトラブルについて相談したい場合は、消費生活センターなどの消費生活相談窓口が利用できます。消費者ホットライン「188(いやや)」に電話をすると、地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます。

すでに利用しているサービスについて不満や疑問がある場合は、まず事業者の苦情を受け付ける窓口に伝えることも大切です。苦情の窓口がどこにあるのかも、契約前に確認しておきたい点の一つです。

介護保険外サービスの選び方や契約で迷ったときに、相談内容と介護保険の利用状況から、ケアマネジャー、地域包括支援センター、消費生活センター、事業者の苦情窓口のどこに相談するかを示す判断チャート

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投稿者プロフィール

わたしのケア編集部
わたしのケア編集部
寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。