訪問マッサージは医療保険が使える?対象になる人・同意書・自己負担を解説

チラシに『訪問マッサージは健康保険が使えます』と書いてあったんです。母は85歳で、最近は足腰が弱ってきたんですが、使えるんでしょうか。

医療保険が使えるのは、筋肉の麻痺や萎縮、関節の拘縮などで、医療上マッサージが必要だと医師が診察の上で同意した場合です。年齢や足腰の衰えだけで対象になるとは限りません。

医師の同意は、どうやってもらえばいいんでしょう。主治医に何と言って頼めばいいのかも分からなくて。

同意書は、医師が診察をしたうえで書いてもらいます。お母さんの体の状態や通院が難しい理由を整理して、主治医に相談するところから始めましょう。何を伝えればよいか、順番に確認していきます。
訪問マッサージは、条件を満たせば医療保険の「療養費」で利用できます。対象は、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など、医療上マッサージを必要とする症例で、医師の同意が必要です。自宅に訪問して施術を受ける場合は、外出などが制限されていて訪問が必要な状況であることも求められます。医師が診察の上で医学的な必要性を判断して同意書を交付し、最終的な療養費の支給可否は、加入している医療保険の保険者が支給要件に照らして判断されます。
この記事では、訪問マッサージで医療保険を使えるケース、高齢であることだけでは対象にならない理由、医師の同意の内容、同意書の相談先、自己負担の考え方、自費利用との違い、利用開始までの流れ、事業者へ確認することを、厚生労働省の資料をもとに説明します。
訪問マッサージで医療保険を使えるケース
訪問マッサージで医療保険を使うには、次の3つの条件を満たしている必要があります。
一つ目は、対象となる症状があることです。厚生労働省が医師向けに示している資料では、あん摩マッサージ指圧の療養費の支給対象は、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など、医療上マッサージを必要とする症例とされています。
二つ目は、医師の同意があることです。医師が患者を診察した上で、マッサージが必要であることに同意し、同意書を交付します。
三つ目は、自宅への訪問が必要な状況であることです。同じ資料では、訪問が必要な状況とは、疾病や負傷のため自宅で静養している場合など、外出などが制限されている状況であるとされています。訪問して施術を受けることについても、医師の同意が必要です。
この3つがそろうことが、医療保険の療養費として訪問マッサージを利用するための基本条件です。ただし、最終的な支給可否は保険者が判断します。いずれかの条件を満たさない場合は、自費での利用や、ほかのサービスを検討します。
なお、訪問マッサージは医療保険の仕組みで利用するもので、介護保険のサービスではありません。そのため、ケアプランの利用限度額とは別に利用することになります。

高齢であることだけでは保険適用にならない
訪問マッサージの広告やチラシには、「保険が使えます」と大きく書かれていることがあるかもしれません。しかし、高齢であることや、足腰が弱ってきたこと、肩や腰がこっていることだけでは、医療保険の対象になるとは限りません。
療養費の対象は、あくまで筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など、医療上マッサージを必要とする症例です。たとえば、脳卒中の後遺症で手足に麻痺があり、関節が固くなっている場合や、長く寝ている状態が続いて筋肉がやせ、関節が動かしにくくなっている場合などが考えられます。ただし、同じような病気や状態であっても、医療上マッサージが必要かどうかは、医師が診察して判断します。
また、疲れを取りたい、リラックスしたいといった目的のマッサージは、医療保険の対象ではありません。そのような目的で利用する場合は、自費での利用になります。
医療上マッサージが必要かどうかは医師が診察して判断し、療養費の支給可否は保険者が支給要件に照らして判断されます。そのため、家族や事業者だけで「保険が使える」と決めず、まずは主治医に相談してください。
医師の同意とは
医療保険で訪問マッサージを受けるには、医師の同意が必要です。医師は、患者を診察した上で、同意書という書類を交付します。同意書の様式は厚生労働省が定めており、最新の様式が厚生労働省のホームページで公開されています。
同意書には、主に次のような内容が記載されています。
- マッサージが必要な症状と、その部位(筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮、その他の医療上マッサージを必要とする症状)
- 訪問又は往療を必要とするかどうかと、その理由
- 施術の種類(変形徒手矯正術などを含む場合)
厚生労働省の医師向けの資料では、同意書を交付するときは患者を診察することを求めており、訪問して施術を受けることについても同意する場合は、同意書の「訪問又は往療」の欄で必要とすることを示し、その理由を記載することとされています。
同意書にもとづいて療養費が支給される期間は6か月です(変形徒手矯正術は1か月)。期間が過ぎた後も施術を続ける場合は、あらためて医師の同意(再同意)が必要になり、再同意の際にも医師が患者を診察します。施術者が作成した「施術報告書」がある場合は、再同意のときに医師が内容を確認することになっています。施術報告書は、施術の内容や経過を医師に伝えるための書類です。

同意書を誰に相談するか
同意書は、本人を診察している医師に相談するのが基本です。定期的に通院している医療機関の医師や、訪問診療を受けている場合は訪問診療の医師が、本人の病状をよく知っているため、相談しやすい相手になります。
医師に相談するときは、次のような情報を伝えるとよいでしょう。
- 体のどの部分が、どのように動かしにくいのか、いつ頃からか
- 通院や外出がどの程度難しいのか
- 訪問マッサージで何を目指したいのか(関節が固くならないようにしたい、など)
- 検討している事業者があれば、その事業者から受けた説明
同意書を交付するかどうかは、医師が診察の上で判断します。医師が同意しない場合は、その理由を確認してみてください。医療上マッサージが必要な状態ではないと判断された場合や、ほかの治療やリハビリのほうが合っていると判断された場合などがあります。医師の説明を踏まえ、訪問リハビリなど別のサービスや、自費での利用を検討することもできます。なお、同意書があっても、療養費の最終的な支給可否は保険者が判断します。
事業者によっては、同意書の手続きを案内したり、同意書の様式を用意したりしている場合があります。ただし、同意書を書くのは医師であり、事業者が医師に代わって判断するものではありません。
ケアマネジャー視点からのアドバイス
「主治医に同意書を頼みにくい」という声はときどき耳にします。しかし、医師は、患者の体の状態が分からなければ判断ができません。家族が「チラシに保険が使えると書いてあったので書いてください」と頼むよりも、「手足のどこがどのように固くなっていて、日常生活でどんなことに困っているのか」「通院がどのくらい難しいのか」「訪問マッサージで何を目指したいのか」を整理して伝えるほうが、医師も判断しやすくなります。
介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーに相談すると、医師に伝える内容を一緒に整理したり、医師との連絡を手伝ったりできることがあります。保険が使えるかどうかを家族だけで決めてしまわないことが大切です。
自己負担の考え方
医療保険で訪問マッサージを利用する場合、費用は療養費として定められた料金にもとづいて計算され、利用者はそのうち自己負担分を支払います。自己負担の割合は、加入している医療保険の種類と年齢、所得によって異なります。
療養費の支払い方には、主に次の2つがあります。
一つは、受領委任などの方法です。利用者は施術所に自己負担分だけを支払い、残りの療養費は施術所が保険者に請求します。厚生労働省の資料では、受領委任や代理受領の場合、施術所での患者負担は一部とされています。
もう一つは、償還払いです。利用者はいったん施術所に費用の全額を支払い、後から自分で保険者に療養費の支給を申請します。申請には、領収書や同意書などの書類が必要です。
どちらの方法になるかは、加入している保険者や施術所の対応によって異なります。事業者に、どの方法で支払うのか、支払う金額の目安はいくらか、申請の手続きは誰が行うのかを確認してください。
療養費の料金は、施術の内容や訪問の状況によって項目が分かれています。2026年(令和8年)6月5日付けの通知で示された明細書の様式には、訪問施術料、変形徒手矯正術、温罨法、往療料、特別地域加算、施術報告書交付料、明細書発行加算などの項目が挙げられています。明細書を受け取ったら、どの項目にいくらかかっているかを確認しましょう。療養費の料金や算定方法は改定されることがあるため、利用時には最新の内容を事業者や保険者に確認してください。

自費利用との違い
医療保険の対象にならない場合や、保険の範囲を超えて施術を受けたい場合は、自費で訪問マッサージを利用することができます。
医療保険で利用する場合は、医師の同意が必要で、対象となる症状や訪問が必要な状況といった条件があります。そのかわり、利用者の負担は自己負担分です。
自費で利用する場合は、医師の同意書は不要で、利用者と事業者の契約にもとづいて施術の内容や時間、料金が決まります。費用は全額自己負担で、料金は事業者ごとに異なります。
どちらの場合も、施術者があん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っていることを確認してください。厚生労働省の通知でも、無資格者によるマッサージの提供は禁止されていると明記されています。
医療保険で利用している人が、同じ事業者で自費の施術を追加できるかどうかや、その場合の料金の扱いは、事業者によって異なります。保険の施術と自費の施術の違いについて、書面で説明を受けるようにしましょう。
利用開始までの流れ
医療保険で訪問マッサージを利用するまでの流れは、一般的に次のとおりです。
- 本人の体の状態と、通院が難しい理由、利用の目的を整理する
- 事業者に問い合わせ、医療保険の対象になりそうか、手続きの流れを確認する
- 主治医に相談し、診察を受けて同意書の交付を依頼する
- 事業者と契約し、支払い方法と施術の日時を決める
- 施術を開始し、6か月の支給期間に合わせて継続を主治医と相談する
2と3の順番は、主治医に先に相談してから事業者を探す形でもかまいません。大切なのは、医師が診察して医学的必要性を判断し、同意書を交付することです。療養費の最終的な支給可否は保険者が判断するため、事業者の説明だけで利用を決めないようにしてください。
介護保険のサービスを利用している場合は、ケアマネジャーにも訪問マッサージを始めることを伝えておくと、ほかのサービスとの日程調整や情報の共有がしやすくなります。
事業者へ確認すること
医療保険で訪問マッサージを利用する事業者を選ぶときは、次の点を確認しておきましょう。
- 施術者があん摩マッサージ指圧師の資格を持っているか
- 医療保険の療養費の取り扱いに対応しているか
- 同意書の手続きをどのように案内しているか
- 支払い方法は受領委任などか償還払いか、1回あたりの自己負担の目安
- 明細書を発行しているか
- 施術報告書を作成し、医師への情報提供をどのように行っているか
- 訪問できる曜日・時間帯、対応地域
- 保険の対象外になった場合や、自費の施術を追加する場合の料金
- キャンセルや休止の扱い
「必ず保険が使えます」「同意書はこちらで手配します」など、医師の診察や判断を前提としない説明を受けた場合は、注意が必要です。医師による診察と同意が必要であり、療養費の支給可否は保険者が要件に照らして判断することを踏まえて、説明の内容を確認してください。
医療保険対応の訪問マッサージを探す
「わたしのケア」では、訪問マッサージを提供している事業者を、地域から探すことができます。本人の体の状態と利用の目的を整理できたら、医療保険への対応や訪問できる時間帯を見比べ、主治医への相談とあわせて事業者に問い合わせてみてください。
掲載されている料金、対応地域、利用条件は変更されることがあります。問い合わせの際に、最新の内容を事業者へ直接確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱い」(令和7年4月版)
- 厚生労働省「療養費の様式一覧」
- 厚生労働省「受領委任制度のご案内」
- 厚生労働省「令和8年度 あはき療養費の改定」
- 厚生労働省「療養費の改定等について」
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投稿者プロフィール

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寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。
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