訪問マッサージ事業者の選び方|利用前に確認したいポイント

家族

母の訪問マッサージを頼もうと思って、近くの事業者を3社見つけました。でも、どこも『保険対応』『国家資格者が施術』と書いてあって、違いが分からないんです。

ケアマネジャー

ホームページの言葉は似ていても、訪問できる時間帯や、主治医との連絡の取り方、担当の方が休んだときの対応などは、事業者ごとに違います。

家族

料金もほとんど同じに見えるので、いちばん近いところでいいかなと思っていたんですが。

ケアマネジャー

近さも大切な条件です。ただ、同じ質問を3社にして答えを並べてみると、違いが見えてきます。比べるときの観点を、順番に整理していきましょう。

訪問マッサージの事業者を選ぶときは、医療保険を使うか自費かを整理した上で、施術者の資格、対応できる体の状態、訪問できる曜日や時間、料金と追加費用、医師やケアマネジャーとの連携、施術内容や目標の説明、担当者が変わるときや休みのときの対応、契約やキャンセルの条件を、同じ基準で比べることが大切です。医療保険を使う場合は、料金の多くが制度で決まっているため、料金以外の点で違いが出やすくなります。

この記事では、訪問マッサージの事業者を比べるときの観点を一つずつ説明し、最後に複数の事業者を比較するときのポイントを紹介します。特定の事業者を順位づけするのではなく、客観的に確認できる項目で比べるための参考にしてください。

訪問マッサージは何を比較するか

訪問マッサージは、一度始めると、週に何回か、長い期間にわたって利用されることが多いサービスです。そのため、最初の印象や料金だけでなく、続けて利用するうえで困らないかどうかを確認しておくことが大切です。

比べる観点は、大きく分けて次の4つです。

一つ目は、制度と資格です。医療保険の療養費に対応しているか、施術者が国家資格を持っているかといった、利用の前提となる条件です。

二つ目は、提供の条件です。本人の体の状態に対応できるか、訪問できる曜日や時間帯、対応地域が合っているかといった、実際に利用できるかどうかにかかわる条件です。

三つ目は、連携と説明です。主治医やケアマネジャーとどのように連携するのか、施術の内容や目標をどのように説明してくれるのかといった、支援の質にかかわる条件です。

四つ目は、契約と費用です。料金と追加費用、担当者の交代や休みのときの対応、キャンセルや解約の条件といった、利用を続けるうえでの条件です。

訪問マッサージとは

訪問マッサージ事業者を比べる観点を、制度と資格、提供の条件、連携と説明、契約と費用の4つに分けた図

保険利用か自費利用か

最初に整理したいのは、医療保険を使って利用するのか、自費で利用するのかです。どちらにするかによって、確認する内容が変わります。

医療保険を使う場合は、療養費の受領委任などに対応している事業者を選ぶ必要があります。対象は、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など、医療上マッサージを必要とする症例である場合です。医療保険で利用する際には、医師が診察の上で同意書を交付することが必要で、最終的な療養費の支給可否は加入している医療保険の保険者が判断します。事業者には、同意書の手続きをどのように案内しているか、支払いは受領委任か償還払いかを確認しましょう。

受領委任を取り扱う施術所は、地方厚生(支)局に申し出を行っており、地方厚生局のホームページなどで、受領委任を取り扱う施術所の一覧が公表されています。受領委任の場合は、利用者は施術所に自己負担分を支払い、残りは施術所が保険者に請求することになります。

自費で利用する場合は、医師の同意書は不要ですが、料金は事業者ごとに異なり、施術時間と料金、交通費などを比べる必要があります。

なお、「必ず保険が使えます」「同意書はこちらで用意します」のように、医師の判断を前提としない説明には注意が必要です。保険が使えるかどうかは、医師の診察と同意によって決まりますので、後になって医療保険が使えなかった場合にトラブルになるリスクがあります。

施術者の資格

訪問マッサージを行うのは、あん摩マッサージ指圧師という国家資格を持つ人です。あん摩マッサージ指圧師法では、医師以外の人があん摩、マッサージまたは指圧を業として行うには、あん摩マッサージ指圧師免許が必要と定められています。

事業者のホームページや案内に「国家資格者が施術」と書かれていても、実際に訪問する担当者の氏名と資格を確認しましょう。免許証や、希望者に発行される厚生労働大臣免許保有証など、資格を確認できるものがあるかを聞く方法もあります。ただし、免許保有証は任意発行のため、持っていないことだけで無資格とは判断できません。

はり・きゅうの施術(訪問鍼灸)もあわせて受ける場合は、はり師・きゅう師の資格も必要です。はり・きゅうの療養費は、神経痛やリウマチなど対象となる疾病や、医師の同意の内容がマッサージとは異なるため、それぞれの目的と制度を確認しておきましょう。

対応できる身体状況

本人の体の状態に、事業者が対応できるかどうかを確認することも大切です。

脳卒中の後遺症による麻痺、パーキンソン病などの神経の病気、寝たきりの状態、骨折後の関節の動きにくさなど、本人の状態を具体的に伝え、同じような状態の人への施術の経験があるかを確認してみましょう。

また、持病や服用している薬によって、施術の際に注意が必要な場合があります。心臓の病気がある、血液をさらさらにする薬を飲んでいる、皮膚が弱いといった情報を伝え、どのように配慮するのかを聞いておくと安心です。

認知症がある場合は、施術に対する不安や拒否が出ることもあります。本人への声のかけ方や、家族が立ち会う必要があるかなども確認しておきましょう。

訪問可能な曜日・時間

訪問マッサージは、定期的に自宅で受けるサービスのため、訪問できる曜日や時間帯が本人の生活に合っているかは重要です。

介護保険のデイサービスやヘルパー、訪問看護などをすでに利用している場合は、それらと重ならない曜日や時間帯に訪問してもらえるかを確認する必要があります。施術時に家族が立ち会いたい場合は、家族の都合のよい時間帯に訪問できるかも聞いておきましょう。

対応地域も確認が必要です。訪問場所と事業者の拠点から離れている場合は、訪問できる曜日が限られたり、急な日程の変更に対応しにくかったりすることがあります。

1回あたりの施術時間と、訪問の頻度(週に何回か)の目安も確認しておきましょう。

料金と追加費用

医療保険を使う場合、料金は療養費として定められた料金にもとづいて計算され、利用者は自己負担分を支払います。令和8年6月の厚生労働省通知で示された明細書の様式には、訪問施術料、変形徒手矯正術施術、温罨法、往療料、特別地域加算、施術報告書交付料、明細書発行加算などの項目があります。

療養費の一部負担金などを支払うときは、正当な理由がない限り、領収証と施術内容が分かる明細書が無償で交付されます。明細書の内容と、1回・1か月あたりの自己負担の目安を事前に確認しましょう。

自費で利用する場合は、1回あたりの料金と施術時間、交通費、初回の費用、延長料金などを確認し、総額で比べまておくとよいでしょう。

医療保険で利用している人が、自費の施術を追加できるかどうかや、その料金の扱いも、事業者によって異なりますので、保険の施術と自費の施術の違いについて、書面で説明を受けるようにしましょう。

訪問マッサージの料金について、医療保険と自費で確認する項目の違いを示した図

医師やケアマネとの連携

訪問マッサージを医療保険で利用する場合は、医師の同意にもとづいて施術が行われ、同意書にもとづく療養費の支給期間は6か月です。その後も施術を続ける場合は、医師の再同意が必要になります。再同意の際に施術報告書が交付または送付されている場合、医師はその内容を確認します。

事業者を選ぶときは、施術報告書を作成しているか、主治医へどのように施術の状況を伝えているかを確認るようにします。これは、施術の経過が医師に伝わることで、医師が再同意の判断をしやすくなり、本人の状態に合った支援を続けやすくなるからです。

介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーとの連携も確認しておきたい点です。訪問の曜日や時間、本人の体の状態の変化などを、ケアマネジャーと共有してもらえるかを聞いてみましょう。複数のサービスを利用している場合、訪問リハビリなど、ほかのサービスとの役割分担を考えるうえでも、情報の共有は大切です。

施術内容や目標の説明

どのような施術を、何を目的に、どのくらいの頻度で行うのかを、分かりやすく説明してもらえるかも、事業者を比べる大切な観点です。

初回の訪問や契約の前に、本人の体の状態をどのように評価し、どのような目標を立てるのかを聞いてみてください。「関節が固くならないようにする」「痛みやこわばりを和らげる」など、目標が具体的に示されると、家族も施術の意味を理解しやすくなります。

また、施術の後に、その日の本人の様子や施術の内容を、どのように本人や家族に伝えてくれるのかも確認します。連絡帳や書面、電話など、報告の方法は事業者によって異なります。

「必ず歩けるようになります」「病気が治ります」など、効果を約束する説明には注意が必要です。なぜなら、施術の効果には個人差があり、状態の改善を約束できるものではないからです。

担当者変更・休みの場合

訪問マッサージは、同じ担当者が継続して訪問することが多いサービスですが、担当者の休みや退職などで、担当が変わることもあります。

担当者が休んだときに、代わりの施術者が訪問できるのか、それともその日の施術が休みになるのかを確認しておきましょう。少人数で運営している事業者では、代わりの施術者がいない場合もあります。

また、担当者が変わる場合に、事前に連絡があるか、本人の状態や施術の内容がどのように引き継がれるのかも確認したい点です。本人が担当者との相性を気にする場合は、担当者の変更を希望できるかどうかも聞いておくと安心です。

年末年始や大型連休など、事業者の休業日も確認しておきましょう。

ケアマネジャー視点のアドバイス

事業者を比べるとき、家族は資格の有無や料金、事業所までの距離に目を向けがちです。けれども、実際に利用を始めてから「思っていたのと違う」と感じる原因は、別のところにあることが少なくありません。たとえば、施術の内容や目標の説明が専門用語ばかりで分かりにくい、担当者の休みの日や年末年始に訪問がなくなることを知らなかった、急な体調不良で休みたいときの連絡先が分からない、といったことです。

問い合わせや初回の訪問のときに、説明が本人や家族にとって分かりやすいか、休みの日はどうなるか、連絡は電話かメッセージか、誰に連絡すればよいのかまでしっかりと確認しておくと、利用後にずれを感じることを減らせるでしょう。契約する前に、聞きたいことを書き出しておくことをおおすすめします。

契約・キャンセル

契約の前には、料金、訪問の頻度、キャンセルの条件、解約の方法が書面で示されているかを確認します。

キャンセルについては、いつまでに連絡すれば料金がかからないのか、体調不良による当日の休みはどう扱われるのかを確認します。入院などで長期間利用できなくなる場合の手続きや、再開の方法も聞いておくと安心です。

解約するときの手続きと、解約までに必要な期間も確認しておきましょう。医療保険で利用している場合は、同意書の期間との関係も含めて説明を受けておくとよいでしょう。

個人情報の取り扱いについても、本人の病名や体の状態を、誰と、どのような目的で共有するのかを確認しておきます。

複数社を比較するときのポイント

複数の事業者を比べるときは、同じ質問をすべての事業者にして、答えを書き留めておくことが大切です。事業者ごとに聞く内容が違うと、答えを並べて比べることができません。

問い合わせの前に、本人の体の状態、利用の目的、希望する曜日と時間帯、医療保険を使う予定かどうかを整理しておき、同じ内容をすべての事業者に伝えます。その上で、この記事で紹介した観点に沿って質問し、答えを表にまとめると、違いが分かりやすくなります。

医療保険を使う場合は、料金の多くが制度にもとづいて決まるため、料金だけでは差がつきにくくなります。訪問できる曜日や時間帯、説明の分かりやすさ、主治医やケアマネジャーとの連携、休みのときの対応など、続けて利用するうえでの条件を中心に比べるとよいでしょう。

可能であれば、初回の訪問や体験の施術で、担当者の説明や本人との相性を確かめてから契約を決めると、利用後の不安を減らせます。迷うときは、ケアマネジャーや主治医に比較の結果を見てもらい、意見を聞くのも一つの方法です。

訪問マッサージ事業者を制度と資格、提供条件、連携と説明、契約と費用で比べるチェックリスト

「わたしのケア」では、訪問マッサージを提供している事業者を地域から探せます。比べる観点を手元に置き、条件に合いそうな事業者へ問い合わせてみてください。

掲載されている料金、対応地域、利用条件は変更されることがあります。問い合わせの際に、最新の内容を事業者へ直接確認してください。

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参考資料


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投稿者プロフィール

わたしのケア編集部
わたしのケア編集部
寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。