自費訪問看護とは?保険適用との違い・費用・選び方

家族

来月、母の検査で大学病院に行くんです。在宅酸素を使っていて、待ち時間が長いと息苦しくなることがあります。

いつも付き添っている妹が今回は無理で、介護タクシーを頼めば大丈夫でしょうか。

ケアマネジャー

介護タクシーは移動を支えてくれますが、病院の中で長く付き添ったり、体調が崩れたときに対応したりすることまでは、想定されていないことが多いんです。

家族

では、看護師さんに付き添ってもらうことはできるんですか。

ケアマネジャー

自費の訪問看護や看護師同行サービスという保険外のサービスがあります。

何で移動するかを決める前に、外出中にどんな支援が必要になるかを整理すると、誰に頼めばよいかが見えてきますよ。

自費訪問看護とは、医療保険や介護保険を使わずに、利用者と事業者の契約にもとづいて全額自己負担で受ける訪問看護のことです。保険の訪問看護では回数や時間、内容に決まりがありますが、自費であれば長時間の見守りや外出への同行など、保険の枠に収まらない支援を相談できます。その代わり、料金は事業者ごとに決められ、費用はすべて利用者側の負担になります。

この記事では、保険の訪問看護との違い、自費訪問看護を利用する主な場面、費用を構成する項目、契約前に確認したいこと、利用開始までの流れを説明します。読み終えるころには、親の状況に自費訪問看護が必要かどうかを判断し、相談するときに何を伝えればよいかを整理できるはずです。

自費訪問看護とは

訪問看護は、看護師などが自宅を訪れ、健康状態の確認や療養上の世話、医療的なケアを行うサービスです。多くの場合は医療保険か介護保険を使って利用しますが、保険の対象外となる時間帯や内容については、保険を使わずに契約で利用する方法があります。これが一般に「自費訪問看護」「保険外の訪問看護」と呼ばれるものです。

提供しているのは、保険の訪問看護も行っている訪問看護ステーションが保険外のサービスとして提供している場合と、自費サービスを専門とする事業者の場合があります。日本訪問看護財団も、訪問看護の費用について、保険給付の対象外となるサービスを同意や契約によって利用する場合には利用料金が追加されること、保険外の利用は全額自己負担であり料金設定は事業所ごとに異なることを説明しています。

自費訪問看護で依頼される内容は、事業者によって幅があります。たとえば、体調の観察や服薬の確認、食事や排せつ、入浴の介助、長時間の付き添い、通院や外出への同行、家族が不在になる時間の見守りなどです。

ただし、自費であれば何でも頼めるわけではありません。点滴の管理や褥瘡(床ずれ)の処置、たんの吸引など、診療の補助にあたる医療的なケアには、原則として主治医の指示が必要です。事業者によって対応できる範囲も異なるため、依頼したい内容と指示書の取り扱いを事前に確認してください。

医療保険・介護保険の訪問看護との違い

保険を使う訪問看護には、医療保険によるものと介護保険によるものがあり、どちらが使われるかは本人の状態によって決まります。

要介護・要支援の認定を受けている人は、原則として介護保険の訪問看護を利用します。訪問看護ステーションなどは主治医から「訪問看護指示書」を受け、ケアマネジャーの作成するケアプランに沿って訪問します。利用者の負担は費用の1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)で、ほかの介護保険サービスと合わせて、要介護度ごとに決められた月の上限額(区分支給限度基準額)の範囲内で利用します。

一方、介護保険の対象とならない人や、要介護認定があっても厚生労働大臣が定める疾病等に該当する人などは、医療保険の訪問看護を利用します。医療保険の訪問看護は原則週3日までで、1回の訪問は30分以上が標準です。厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や、病状の急な悪化などで主治医から「特別訪問看護指示書」が出ている期間は、週4日以上や1日に複数回の訪問ができることがあります。特別訪問看護指示書による訪問は、原則月1回、指示日から14日までです。一定の状態では月2回まで交付できる例外があります。

このように、保険の訪問看護は必要な人に医療的な支援を届ける仕組みである一方、回数や時間、手続きに決まりがあります。自費訪問看護は、その決まりの外側を補うものとして位置づけると整理しやすくなります。

比較する点保険の訪問看護自費訪問看護
利用の根拠主治医の指示(介護保険ではケアプランにも位置づけ)利用者と事業者の契約
回数・時間制度上の決まりがある事業者と相談して決める
費用の負担原則1~3割全額自己負担
料金制度で定められた単価事業者ごとに異なる

自費訪問看護では、ケアマネジャーへの相談は利用条件ではありません。医療的なケアを依頼する場合は主治医の指示が必要なことが多く確認します。介護保険を利用中で担当ケアマネジャーがいる場合は、自費の支援を加える時間帯や目的を必要に応じて共有すると、保険サービスとの重なりや抜けを防ぎやすくなります。

訪問看護を介護保険、医療保険、自費の3つに分け、対象者、利用のしかた、費用負担を比較した図

自費訪問看護を利用する主な場面

自費訪問看護が検討されるのは、保険の訪問看護では時間や回数が足りない場面や、保険では対象になりにくい外出への付き添いが必要な場面です。ここでは代表的な3つの場面を紹介します。

長時間の見守り・療養支援

保険の訪問看護は1回あたりの時間が限られているため、訪問が終わった後は家族が見守りを引き継ぐことになります。体調が不安定で目を離しにくい時期や、夜間に何度も起きてしまう時期には、家族の負担が大きくなりがちです。

自費訪問看護では、数時間から半日、事業者によっては夜間を含めた長時間の付き添いを相談できます。体調の変化に気づいて主治医や家族に連絡する、服薬や食事、排せつを手伝うといった支援を、看護師が続けて行える点が特徴です。人生の最終段階を自宅で過ごす人の家族が、看取りの時期に長時間の支援を依頼することもあります。

長時間の支援を依頼する場合は、担当する看護師が途中で交代するのか、休憩の扱いはどうなるのか、夜間に対応できる体制があるのかを、事前に確認しておく必要があります。

通院・外出・旅行の同行

病院への通院、冠婚葬祭への出席、家族との食事や旅行など、外出の機会に看護師が付き添うのも、自費訪問看護で依頼されることの多い支援です。移動中や外出先での体調変化への対応、服薬、排せつの介助、たんの吸引など、外出中に医療的な配慮が必要な人にとっては、看護師の同行が外出の条件になる場合があります。

保険の訪問看護は、原則として自宅で行われるサービスです。自宅の外での長時間の付き添いは保険の枠に収まりにくいため、保険外のサービスとして検討されることになります。

外出への同行は、専門の「看護師同行サービス」として提供されていることもあります。移動手段として介護タクシーを別に手配するのか、事業者が移動も含めて対応するのかなど、確認することが多いので、早めに相談してください。

退院直後や家族不在時の支援

退院した直後は、生活の環境が変わり、体調も安定しきっていないことがあります。保険の訪問看護やヘルパーの利用が始まるまでに間が空いたり、始まってからも慣れるまで不安が残ったりする時期に、自費で手厚い支援を加える使い方があります。

家族の出張や冠婚葬祭、介護をしている家族自身の体調不良などで、数日間だけ支援が途切れる場面も同様です。短期間の利用でも、事前の面談や初回の手続きが必要になることが多いため、予定が分かった時点で問い合わせておくと、調整しやすくなります。

ケアマネジャー視点のアドバイス

「保険ではできないと言われたから自費で」と家族だけで決めて申し込むと、主治医や現在利用している支援者に情報が共有されず、服薬や体調の把握に行き違いが生じることがあります。相談の前に、「何のために」「どの曜日・時間帯に」「何時間くらい」支援が必要なのかを書き出してみてください。まず主治医へ伝え、医療保険で対応できる状態なのか、自費で補う必要があるのかを整理します。

介護保険を利用中で担当のケアマネジャーがいる場合は、必要に応じて共有すると、保険サービスとの時間や役割を調整しやすくなります。ケアマネジャーへの相談は、自費訪問看護や医療保険の訪問看護を利用するための必須条件ではありません。自費訪問看護の事業者にも同じメモを見せることで、見積もりと実際の支援の食い違いを減らせます。

費用を構成する項目

自費訪問看護の料金は、事業者が独自に設定しています。国が定めた単価はなく、同じような内容でも事業者や地域によって金額が大きく異なります。そのため、この記事では相場の金額は示さず、料金がどのような項目で構成されているかを説明します。

一般的に、料金は次のような項目で組み立てられています。

  • 基本料金(1時間あたりの料金、または時間の区切りごとの料金)
  • 最低利用時間(「1回2時間から」など)
  • 時間帯による割増(早朝・夜間・深夜・休日)
  • 交通費・出張費(実費か定額か、対応地域外の扱い)
  • 初回の費用(入会金、登録料、事前面談や訪問前の打ち合わせ)
  • 延長料金とキャンセル料
  • 外出同行時の付き添い者の交通費・入場料・食事代・宿泊費

看護師が長時間付き添う場合、基本料金だけでなく、最低利用時間や夜間の割増によって総額が変わります。また、外出や旅行への同行では、本人の費用とは別に、付き添う看護師の交通費や宿泊費を利用者が負担するのが一般的です。事業者の料金表に載っていない費用が発生することもあるため、見積もりの段階で「この条件の場合、総額はいくらになるか」を確認してください。

なお、自費訪問看護の費用は全額自己負担であり、介護保険の区分支給限度基準額の計算や、高額介護サービス費などの介護保険の負担軽減制度の対象にはなりません。継続して利用する場合は、1か月あたりの支出の見通しを家族で共有しておくと安心です。

自費訪問看護の料金が、基本料金に時間帯の割増、交通費、初回費用、延長・キャンセル料、外出同行時の費用が加わって決まることを示す図

契約前に確認したいこと

自費訪問看護は、事業者によって対応できる内容、担当する看護師の体制、料金の決め方が異なります。料金の安さだけで決めると、依頼したい支援に対応していなかったり、急な体調変化の際の連絡体制が想定と違っていたりすることがあります。契約前には、次の点を確かめておきましょう。

一つ目は、依頼したい支援に対応しているかどうかです。見守り、服薬の確認、入浴介助、外出同行、夜間の付き添いなど、具体的な内容を伝え、対応できることとできないことを確認します。医療的なケアを含む場合は、主治医の指示書や指示の内容をどのように受け取るのか、主治医とどう連絡を取り合うのかもあわせて聞いておきます。

二つ目は、担当者と体制です。担当するのが看護師なのか、看護師以外の職員が担当する時間があるのかを確認します。長時間の支援では、交代する職員がいるのか、担当者が急に休んだ場合に代わりの人が来られるのかも重要です。

三つ目は、緊急時の対応です。支援中に体調が急変した場合、救急車を呼ぶ判断や主治医・家族への連絡をどのような順番で行うのかを決めておきます。事業者が賠償責任保険に加入しているかどうか、事故が起きた場合の対応も確認しておきたい点です。

四つ目は、報告と情報共有の方法です。支援の内容や本人の様子を、記録や連絡でどのように家族へ伝えてくれるのかを確認します。保険の訪問看護を併用している場合や、介護保険を利用中で担当ケアマネジャーがいる場合は、それぞれと必要な情報をどう共有するかも確認しておくと安心です。

五つ目は、契約と料金です。料金、キャンセルの期限と料金、解約の方法、個人情報の取り扱いが、書面で示されているかを確認してください。口頭での説明だけで契約を進めず、疑問点は契約前に解消しておくことが大切です。

利用開始までの流れ

自費訪問看護は、問い合わせから利用開始まで、一般的に次のような流れで進みます。

  1. 支援が必要な目的・時間帯・内容を整理する
  2. 主治医に相談し、必要に応じて関係者へ共有する
  3. 事業者に問い合わせ、条件を伝える
  4. 面談で本人の状態を共有し、見積もりを受け取る
  5. 契約内容の説明を受け、契約する
  6. 利用を開始し、様子を見ながら内容を見直す

1と2は、自費訪問看護が本当に必要かを判断するための段階です。保険の訪問看護の回数や時間を見直すことで対応できる場合や、状態によっては医療保険で訪問を増やせる場合もあるため、まず主治医に相談すると整理しやすくなります。介護保険を利用中で担当ケアマネジャーがいる場合は、必要に応じて共有すると保険サービスとの組み合わせを調整しやすくなります。要介護認定を受けていない場合でも、ケアマネジャーへの相談は必須ではありません。生活全般の相談先が必要なときは、地域包括支援センターを利用できます。

3の問い合わせでは、本人の病名や状態、服薬の内容、必要な医療的ケア、希望する日時と時間、自宅の場所などを伝えます。4の面談では、事業者が本人の状態を確認した上で、支援内容と見積もりを示すのが一般的です。医療的なケアを依頼する場合は、この段階で主治医の指示書の取り扱いについても確認します。

6の見直しは、継続して利用する場合に欠かせません。実際に使ってみると、想定より時間が必要だったり、逆に保険の訪問看護で足りるようになったりします。本人の体調や生活の変化に合わせて、事業者と主治医に相談しながら調整してください。介護保険を利用中で担当ケアマネジャーがいる場合は、必要に応じて変更内容を共有します。

自費訪問看護の利用開始までの6つの手順と、各段階の相談相手と確認事項を示した手順図

よくある質問

Q.要介護認定を受けていなくても利用できますか。

利用できます。自費訪問看護は事業者との契約で利用するサービスのため、要介護認定の有無は利用の条件になりません。ただし、医療的なケアを含む場合は主治医の指示が必要になることがあり、事業者によっては利用前に本人の状態の確認や面談を行います。

Q.保険の訪問看護と同じ事業所で自費の支援も頼めますか。

保険の訪問看護を行っている訪問看護ステーションの中には、保険外の支援も提供しているところがあります。同じ事業所に頼む場合は、保険の訪問と自費の支援で、内容、時間、料金、請求がどのように分けられているかを確認してください。

Q.夜間だけ、または1日だけでも依頼できますか。

夜間のみや単発の利用に対応している事業者もありますが、最低利用時間や夜間の割増、対応地域などの条件は事業者ごとに異なります。初めて利用する場合は事前の面談が必要になることも多いため、日程が決まったら早めに問い合わせてください。

Q.費用は医療費控除の対象になりますか。

サービスの内容や提供者によって扱いが異なるため、一律には言えません。対象になるかどうかは、税務署や税理士、事業者に確認してください。

自費訪問看護の事業者を探す

「わたしのケア」では、自費訪問看護に対応している事業者を、地域やサービス内容から探すことができます。支援が必要な目的や時間帯を整理できたら、対応内容や体制を見比べ、条件に合いそうな事業者に問い合わせてみてください。

掲載されている料金、対応地域、利用条件は変更されることがあります。問い合わせの際に、最新の内容を事業者へ直接確認してください。


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投稿者プロフィール

わたしのケア編集部
わたしのケア編集部
寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。