訪問歯科の費用は?医療保険・介護保険と自己負担の考え方

家族

母の入れ歯の調整で、訪問歯科をお願いしようと思っています。

でも、家まで来てもらうと費用が高くなるんじゃないかと心配で。1回いくらくらいかかるものなんでしょう。

ケアマネジャー

訪問歯科の費用は、診療の内容に応じた費用と、訪問して診療することに関する費用などを組み合わせて決まり、医療保険や介護保険の自己負担割合で支払います。一律の料金はないので、『1回いくら』だけでは比べられないんです。

家族

そうなんですね。では、何を聞けば費用の見当がつくんでしょう。

ケアマネジャー

どんな診療を何回くらい受けるのか、どの部分が医療保険で、どの部分が介護保険なのか、ほかに別の費用がかからないかを分けて確認するのがポイントです。一つずつ見ていきましょう。

訪問歯科の費用は、一律に決まった料金ではありません。入れ歯の調整や虫歯の治療など、診療そのものの費用に加えて、訪問して診療を行うことに関する費用が医療保険で算定されます。要介護・要支援認定を受けている人は、歯科医師や歯科衛生士による管理や指導が、介護保険の居宅療養管理指導または介護予防居宅療養管理指導として算定される場合もあります。利用者は、それぞれの保険の自己負担割合に応じて支払います。

この記事では、訪問歯科の料金が何で決まるのか、診療そのものの費用、歯科訪問診療に関する費用、介護保険との関係、訪問先や診療内容による違い、交通費などを確認するケース、自己負担の考え方、相談時に確認することを説明します。費用を構成する項目を理解し、歯科医院に確認すべきことを整理するための参考にしてください。

訪問歯科の料金は何で決まるか

訪問歯科の費用は、大きく分けて次の3つの項目の組み合わせで決まります。

一つ目は、診療そのものの費用です。入れ歯の調整や作製、虫歯の治療、歯石の除去など、行った診療の内容に応じて、医療保険の診療報酬の点数にもとづいて計算されます。

二つ目は、訪問して診療することに関する費用です。通院による歯科治療が難しい人の自宅や施設を訪問して診療した場合に、医療保険で「歯科訪問診療料」などが算定されます。

三つ目は、介護保険の居宅療養管理指導の費用です。要介護・要支援認定を受けている人に、歯科医師や歯科衛生士が療養上の管理や指導を行った場合に、介護保険で算定されます。

このほか、医療保険や介護保険の対象にならない費用がかかる場合もあります。

診療報酬や介護報酬は国が定め、定期的に見直されます。歯科の診療報酬は2026年(令和8年)6月に改定され、歯科訪問診療や訪問歯科衛生指導に関係する項目も見直されました。費用の見通しは、最新の制度にもとづいて歯科医院に説明してもらいましょう。

訪問歯科の費用が医療保険の診療費と訪問診療料、介護保険の居宅療養管理指導、保険対象外費用で構成されることを示した図

診療そのものの費用

診療そのものの費用は、歯科医院に通って受診する場合と同じように、行った診療の内容に応じて計算されます。訪問歯科でも、患者の状態と訪問先で行える範囲に応じて、外来と同様の歯科治療が行われます。

たとえば、入れ歯の調整や修理を行った場合、新しい入れ歯を作った場合、虫歯や歯ぐきの治療を行った場合、歯石を取った場合など、それぞれの診療に応じた費用がかかります。検査や画像診断を行えば、その費用も加わります。

診療の内容は、初回の診察で口の中の状態を確認した上で決まるため、事前に正確な金額を示すことは難しい場合があります。新しい入れ歯を作る場合のように、複数回の訪問が必要な診療では、費用も複数回に分かれて発生します。

どのような診療を、何回くらいの訪問で行う予定なのか、初回の訪問の後に計画と費用の見通しを説明してもらうとよいでしょう。

訪問歯科とは

歯科訪問診療に関する費用

訪問歯科では、診療そのものの費用に加えて、訪問して診療を行うことに関する費用が医療保険で算定されます。代表的なものが「歯科訪問診療料」です。

歯科訪問診療の対象は、在宅などで療養しており、疾病や傷病のため通院による歯科治療が困難な患者です。歯科訪問診療料は、同じ建物で同じ日に診療を受ける人数や、1人あたりの診療時間が20分以上か未満かなどで区分されます。2026年度改定では、多人数に対する区分や施設基準も見直されています。

また、歯科衛生士が訪問して口の中の清掃や、口腔ケアの方法の指導などを行った場合には、医療保険の「訪問歯科衛生指導料」が算定されることがあります。2026年の改定では、訪問歯科衛生指導料について、同じ建物で指導を受ける人数ごとの点数の見直しなどが行われています。

このほか、歯科医院の体制に応じた加算などがあり、2026年の改定では、在宅療養を支援する歯科診療所などに関する加算の見直しも行われています。

こうした訪問に関する費用は、どの歯科医院でも同じ条件であれば同じ基準で計算されますが、歯科医院の体制や、訪問の状況によって算定される項目が異なることがあります。

介護保険との関係

要介護・要支援認定を受けている人は、訪問歯科の中で、介護保険の「居宅療養管理指導」または「介護予防居宅療養管理指導」が算定される場合があります。これらは、歯科医師などが行う療養上の管理や指導を介護保険で評価するサービスです。

訪問歯科では、歯科医師による歯科医学的な管理や助言、歯科衛生士等による口腔内の清掃や口腔ケアの実地指導などが、介護保険の居宅療養管理指導として行われることがあります。

居宅療養管理指導は介護保険のサービスですが、要介護度ごとの区分支給限度基準額の対象には含まれません。利用者は、介護保険の自己負担割合(1割、一定以上の所得がある人は2割または3割)に応じて支払います。

同じ訪問の中で、診療は医療保険、管理や指導は介護保険というように、二つの保険が組み合わさることがあります。請求書や領収書で、どの部分が医療保険で、どの部分が介護保険なのかを確認できるようにしておくとよいでしょう。介護保険のサービスが含まれる場合は、ケアマネジャーにも情報が共有されることがあります。

訪問先や診療内容による違い

訪問歯科の費用は、同じ診療を受ける場合でも、訪問先や状況によって変わることがあります。

一つは、訪問先の違いです。自宅に1人で住んでいる人を訪問する場合と、施設や集合住宅で同じ日に複数の人を診療する場合とでは、歯科訪問診療料の区分が異なります。一般に、同じ建物で同じ日に診療を受ける人数が多いほど、1人あたりの訪問に関する費用は低く設定されています。

もう一つは、診療時間の違いです。歯科訪問診療料は、1人あたりの診療時間が20分以上か未満かによって区分されています。

さらに、診療の内容によっても費用は大きく変わります。口腔ケアや入れ歯の調整が中心の月と、新しい入れ歯を作る月とでは、費用が異なります。

このように、訪問歯科の費用は、人数、時間、診療内容の組み合わせで変わるため、他の人の費用や、インターネット上の金額の例をそのまま当てはめることはできません。

訪問歯科の費用が訪問先の人数、診療時間、診療内容によって変わることを示した図

交通費等を確認するケース

訪問歯科では、医療保険や介護保険の対象となる費用のほかに、別の費用がかかる場合があります。

厚生労働省の資料では、患者から実費を徴収できるものとして、療養の給付と直接関係ないサービス等の実費が挙げられています。訪問歯科の場合も、保険の対象とならない物品やサービスについて、歯科医院が別に費用を設定していることがあります。

歯科訪問診療に要した交通費は、診療報酬の歯科点数表で患者の負担と定められています。交通手段や距離による実費の扱いは歯科医院ごとに確認し、請求する場合の計算方法と金額の目安を事前に聞いておきましょう。

保険診療として訪問する場合、歯科医院から訪問先までの距離は原則として16キロメートル以内です。16キロメートルを超える訪問は、その歯科医院からの訪問が必要となる特別な事情がある場合に限られます。遠方の歯科医院に依頼するときは、保険診療として扱えるかを確認してください。

保険の対象とならない費用がかかる場合は、その内容と金額について、事前に説明を受けて同意した上で利用することが大切です。

自己負担の考え方

訪問歯科の自己負担は、医療保険の部分と介護保険の部分で、それぞれの自己負担割合に応じて計算されます。

医療保険の部分は、診療そのものの費用と、歯科訪問診療料などの訪問に関する費用です。自己負担の割合は、加入している医療保険の種類と年齢、所得によって異なります。

介護保険の部分は、居宅療養管理指導または介護予防居宅療養管理指導の費用です。自己負担の割合は1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)です。

これに、保険の対象とならない費用がかかる場合は、その費用が加わります。

毎月どのくらいの負担になるかは、訪問の回数や診療の内容によって変わります。最初の数か月は、入れ歯の作製などで費用がかさむこともあれば、口腔ケアが中心になると負担が落ち着くこともあります。定期的に訪問を受ける場合は、1か月あたりの負担の見通しを歯科医院に聞いておくと、家計の計画を立てやすくなります。

ケアマネジャー視点のアドバイス

訪問歯科の費用について、家族から「1回いくらかかりますか」と聞かれることがよくあります。けれども、訪問歯科の費用は、診療の内容、医療保険と介護保険のどちらで算定されるか、訪問に関する費用、保険の対象外の費用が組み合わさって決まるため、「1回いくら」という比べ方では実際の負担が分かりにくくなります。歯科医院に相談するときは、「今月はどんな診療を何回行う予定か」「医療保険と介護保険の部分はそれぞれいくらくらいか」「交通費など保険以外の費用はあるか」を分けて聞いてみてください。領収書が届いたら、介護保険の部分があるかどうかも確認し、ケアマネジャーにも共有していただくと、ほかの介護サービスの費用も含めて全体の負担を一緒に考えやすくなります。

相談時に確認すること

訪問歯科を依頼する前や、初回の訪問のときには、費用について次のようなことを確認しておきましょう。

  • 初回の訪問でかかる費用の目安
  • 今後の診療の計画と、訪問の回数の見通し
  • 医療保険の部分と介護保険の部分の区別
  • 1か月あたりの自己負担の見通し
  • 交通費など、保険の対象とならない費用の有無と金額
  • 支払いの方法と時期(訪問のたびか、月ごとか)
  • 領収書や明細書の発行
  • 訪問のキャンセルや日程変更の扱い

医療保険の自己負担の割合や、介護保険の自己負担の割合が分かる書類(保険証や負担割合証など)も、事前に用意しておくと説明を受けやすくなります。

訪問歯科の費用を診療の見通し、保険の区別、別費用、支払いと手続きに分けて確認するチェックリスト

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参考資料


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投稿者プロフィール

わたしのケア編集部
わたしのケア編集部
寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。