訪問マッサージとは?利用できる人・医療保険・料金・選び方

父は脳梗塞の後、手足のこわばりが強くなってきました。郵便受けに『訪問マッサージは保険が使えます』というチラシが入っていたんですが、高齢なら誰でも使えるものなんですか。

訪問マッサージは、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師が自宅に来て施術するサービスです。医療保険を使うには、筋肉の麻痺や関節の拘縮などで医療上マッサージが必要だと医師が同意することが前提で、そのうえで保険者が療養費の支給可否を審査します。高齢であることだけでは対象になりません。

保険が使えなかったら、自費になるんでしょうか。そもそも父に合うのかどうかも分からなくて。

自費で利用する方法もあります。まずはお父さんの体の状態と、通院が難しい理由、何のために利用したいのかを整理して、主治医と事業者に相談してみましょう。
訪問マッサージは、通院が難しい人の自宅や施設に施術者が訪問し、マッサージなどの施術を行うサービスです。一定の条件を満たし、医師の同意がある場合は医療保険の療養費として利用でき、条件にあたらない場合は自費で利用することになります。保険を使う場合と自費の場合では、必要な手続きも費用の考え方も異なります。
この記事では、訪問マッサージの概要、店舗型のマッサージとの違い、利用している人の例、医療保険を使う場合と自費で利用する場合の違い、訪問鍼灸との関係、費用の考え方、利用開始までの流れ、事業者を選ぶときのポイントを説明します。親にとって訪問マッサージが候補になるかを判断し、地域の事業者を探すための参考にしてください。
訪問マッサージとは
訪問マッサージは、あん摩マッサージ指圧師が利用者の自宅や入居している施設を訪問し、マッサージや関節を動かす施術などを行うサービスです。あん摩マッサージ指圧師は国家資格で、厚生労働省の通知でも、無資格者によるマッサージの提供は禁止されていると明記されています。
訪問マッサージが利用される主な理由は、通院が難しいことです。脳卒中の後遺症や神経の病気、長く寝ている時間が続いたことなどによって、筋肉がこわばったり、関節が動かしにくくなったりしている人が、施術所へ通えないために自宅で施術を受けます。
訪問マッサージには、医療保険を使う場合と、自費で利用する場合があります。医療保険を使う場合は、健康保険などの「療養費」という仕組みで費用の一部が支給されます。療養費を受けるには医師の同意が必要で、対象となる症状や、訪問が必要な状況にも条件があります。介護保険のサービスではなく、ケアプランの利用限度額とは別の仕組みです。
施術の内容は、本人の状態や施術者の判断によって異なりますが、マッサージのほか、関節を動かして動く範囲を保つことを目的とした施術などが行われます。なお、効果の現れ方には個人差があり、状態の改善を約束できるものではありません。
店舗型マッサージとの違い
訪問マッサージと、街中の店舗で受けるマッサージや、いわゆるリラクゼーションサービスとの違いは、主に目的、施術者、保険の扱いです。
店舗型のリラクゼーションサービスは、疲れを癒やすことなどを目的としたもので、施術者が国家資格を持っていない場合もあります。料金は全額自己負担で、医療保険は使えません。
訪問マッサージは、病気やけがによって体の機能に問題がある人を主な対象とし、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師が施術を行います。医療保険の療養費の対象となる場合があり、その場合は医師の同意にもとづいて施術が行われるものです。
また、訪問マッサージは自宅という生活の場で行われるため、ベッドの上で施術を受けたり、家族が様子を見守ったりすることができます。施術者によっては、自宅での姿勢や体の動かし方について助言することもあります。
どのような人が利用しているか
訪問マッサージを利用しているのは、主に次のような状態の人です。
一つは、脳卒中の後遺症などで手足に麻痺があり、筋肉のこわばりや関節の動きにくさがある人。もう一つは、パーキンソン病などの神経の病気により、筋肉がこわばったり、体が動かしにくくなったりしている人です。
さらに、長く寝ている時間が続いたことで筋力が落ち、関節が固くなっている人や、骨折などの後に体が動かしにくくなっている人もいます。
いずれの場合も、医療保険を使うには、症状が療養費の対象にあたり、医師が施術の必要性を認めて同意することが必要です。そのうえで、療養費の支給可否は加入している保険者が審査します。同じ病気でも状態によって扱いが異なるため、まずは主治医と事業者に相談し、必要に応じて保険者にも確認してください。
体の動かしにくさがある場合は、理学療法士などが自宅を訪問する介護保険や医療保険の訪問リハビリも選択肢になります。訪問マッサージとは目的や担当する専門職、制度が異なるため、どちらが合うかは主治医やケアマネジャーと相談してください。
ケアマネジャーの視点
訪問マッサージの相談では、「年を取って体が固くなってきたから」「チラシに保険が使えると書いてあったから」という理由から話が始まることがあります。しかし、医療保険を使えるかどうかは年齢で決まるものではなく、医師の同意が必要です。そのため、相談の前に、どの部位がどのように動かしにくいのか、いつ頃からか、通院が難しい理由は何か、訪問マッサージで何を目指したいのか(関節を固くしないようにしたい、痛みを和らげたい、など)を書き出してみてください。整理した内容を主治医に伝えれば、施術の必要性を判断してもらうための診察が進めやすくなり、ケアマネジャーや事業者と相談するときにも役立ちます。
医療保険を使う場合
訪問マッサージで医療保険を使う場合は、「あん摩マッサージ指圧療養費」という診療報酬を利用し、厚生労働省の資料では、療養費の対象は、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など、医療上マッサージを必要とする症例とされています。
療養費を受けるには、医師の同意が必要であり、医師が診察の上で同意書を交付し、その同意にもとづいて施術が行われます。厚生労働省が医師向けに示している資料では、同意書にもとづいて療養費が支給される期間は6か月とされ(変形徒手矯正術は1か月)、期間が過ぎたのちも施術を続ける場合は、あらためて医師の同意が必要になります。
また、自宅に訪問してもらって施術を受ける場合は、訪問が必要な状況であることも条件になり、同じ資料でも訪問が必要な状況とは、疾病や負傷のため自宅で静養している場合など、外出などが制限されている状況であるとされています。
費用の支払い方には、施術所がいったん療養費を受け取る「受領委任」などの方法と、利用者がいったん全額を支払い、後から保険者に請求する「償還払い」があります。受領委任などの方法では、利用者が施術所に支払うのは自己負担分です。どの方法が使えるかは、加入している保険者や施術所によって異なるため、事前に確認してください。
療養費の制度や様式は見直されることがあり、厚生労働省のホームページで最新の様式が公開されています。2026年(令和8年)6月には、施術の明細書の様式などに関する通知も出されています。
自費で利用する場合
医療保険の対象にならない場合や、保険の範囲を超えて利用したい場合は、自費で訪問マッサージを利用することもあります。自費の場合は医師の同意書は不要で、利用者と事業者の契約にもとづいて、施術の内容や時間、料金が決まります。
自費で利用する場合でも、施術者があん摩マッサージ指圧師の資格を持っているかどうかは必ず確認してください。持病がある場合や、体の状態に不安がある場合は、医療保険を使わない場合であっても、事前に主治医に相談しておくと安心です。
医療保険の施術と自費の施術を同じ日に組み合わせられるか、料金をどのように区分するかは、事業者だけでなく加入している保険者にも確認してください。契約書、領収書、明細書では、保険分と自費分の施術内容・金額が区別されているかを確認しましょう。

訪問鍼灸との関係
訪問マッサージを提供している事業者の中には、はり・きゅうの施術を行う「訪問鍼灸」もあわせて提供しているところがあります。はり・きゅうは、はり師・きゅう師という別の国家資格による施術です。
はり・きゅうも、一定の条件を満たせば医療保険の療養費の対象になります。厚生労働省の資料では、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症の6つの疾病について、保険医の診察の上で同意書の交付を受けて施術を受けた場合が支給の対象とされています。
あん摩マッサージ指圧とはり・きゅうでは、対象となる症状や医師の同意の内容が異なります。事業者から両方の施術を勧められた場合は、それぞれがどのような目的で、どの制度にもとづいて行われるのかを確認し、必要であれば主治医に相談してください。
費用の考え方
訪問マッサージの費用は、医療保険を使うか、自費で利用するかによって考え方が異なります。
医療保険を使う場合は、療養費として定められた料金にもとづいて計算され、利用者はそのうち自己負担分を支払います。自己負担の割合は、加入している医療保険と年齢、所得によって異なります。療養費の料金は、施術の内容や訪問の状況によって項目が分かれており、2026年6月の通知で示された明細書の様式には、訪問施術料、変形徒手矯正術、温罨法、往療料、特別地域加算、施術報告書交付料、明細書発行加算などの項目が挙げられています。どの項目が算定されるかは、施術の内容や訪問先の状況によって異なります。
自費で利用する場合は、事業者が独自に料金を設定しています。1回あたりの料金、施術時間、交通費、初回の費用などを確認し、総額で比べることが大切です。
いずれの場合も、特定の金額を相場として考えるのではなく、事業者から見積もりや料金の説明を受け、何にいくらかかるのかを確認してください。

利用開始までの流れ
訪問マッサージを医療保険で利用する場合は、一般的に次のような流れで進みます。
- 本人の状態と、利用の目的を整理する
- 事業者に問い合わせ、医療保険の対象になりそうかを相談する
- 主治医に相談し、診察を受けて同意書の交付を依頼する
- 事業者と契約し、施術の日時を決める
- 施術を開始し、同意の期間に合わせて継続を相談する
2の問い合わせでは、病名、体の状態、通院が難しい理由、希望する曜日や時間帯を伝えます。事業者から、保険の対象になりそうかどうかや、同意書の手続きについて説明を受けます。ただし、医師は診察にもとづいて施術の必要性を判断して同意し、療養費の支給可否は加入している保険者が審査します。事業者の説明だけで決まるものではありません。
3の段階では、主治医に訪問マッサージを検討していることを伝え、診察を受けます。同意書の様式は厚生労働省が定めており、事業者が様式を用意している場合もあります。
5の継続の段階では、同意書にもとづいて療養費が支給される期間が6か月であるため、期間が過ぎる前に、施術を続けるかどうかを主治医と相談します。
自費で利用する場合は、2の問い合わせの後、施術内容と料金の説明を受けて契約し、施術を開始します。介護保険のサービスを利用している場合は、ケアマネジャーにも訪問マッサージを始めることを伝えておくと、ほかのサービスとの日程や情報の共有がしやすくなります。

事業者を選ぶときのポイント
訪問マッサージの事業者を選ぶときは、次の点を確認しておきましょう。
最初に確認したいのは、施術者の資格です。施術を行う人があん摩マッサージ指圧師の資格を持っているかを確認します。はり・きゅうの施術も受ける場合は、はり師・きゅう師の資格も確認が必要です。
次に、医療保険への対応です。医療保険の療養費の取り扱いに対応しているか、同意書の手続きをどのように案内しているか、支払いは受領委任などの方法か償還払いかを確認します。
さらに、施術の内容と目標の説明です。どのような施術を、何を目的に、どのくらいの頻度で行うのかを、分かりやすく説明してもらえるかを確認します。効果を約束するような説明には注意してください。
あわせて、訪問できる曜日や時間帯、対応地域、担当者が休んだ場合の対応、主治医やケアマネジャーとの連携の方法、料金と追加費用、キャンセルの条件も確認しておきたい点です。
地域の訪問マッサージを探す
「わたしのケア」では、訪問マッサージを提供している事業者を、地域から探すことができます。親の体の状態と利用の目的を整理できたら、保険への対応や訪問できる時間帯を見比べ、条件に合いそうな事業者に相談してみてください。
掲載されている料金、対応地域、利用条件は変更されることがあります。問い合わせの際に、最新の内容を事業者へ直接確認してください。
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投稿者プロフィール

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寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。
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