高齢の親の外出・旅行を支える看護師同行サービス|準備と費用

父が「もう一度、故郷の墓参りに行きたい」と言うんです。
でも在宅酸素を使っていて、新幹線で3時間かかります。家族だけで連れて行けるのか不安で。

看護師が旅行に付き添う、看護師同行サービスがあります。
移動中の体調の確認や、服薬、排せつの手伝いなどを頼むことができます。

看護師さんが一緒なら、行けそうですね。

ただし、看護師が同行すれば必ず行ける、というわけではないんです。
まず主治医に相談して、交通機関や宿の手配、体調が悪くなったときの対応まで準備を整えることが大切です。
どんな準備が必要か、順番に見ていきましょう。
看護師同行サービスは、病気や障害のある人の外出や旅行に看護師が付き添い、移動中や滞在先での体調の観察、服薬や排せつの介助、医療的な配慮が必要な場面への対応を行う保険外のサービスです。旅行の場合は、主治医の確認、交通機関や宿泊先との調整、緊急時の対応の取り決めなど、事前の準備が欠かせません。ただし、看護師が同行すれば必ず旅行ができるというものではなく、本人の状態と準備によって、実現の可否や計画の内容が変わります。
この記事では、看護師同行で外出・旅行を支える方法、利用を検討しやすい場面、事前に確認する健康状態と医療的ケア、主治医・交通機関・宿泊先との調整、料金を構成する項目、相談から当日までの流れ、事業者の選び方を説明します。移動中の医療や介助の必要を整理し、実現できるかどうかを事業者に相談するための参考にしてください。
看護師同行で外出・旅行を支える方法
看護師同行サービスは、自費の訪問看護を提供する訪問看護ステーションや、看護師による付き添いを専門とする事業者などが提供しています。保険の訪問看護は主治医の指示にもとづいて自宅で提供されるサービスのため、外出や旅行への付き添いは、利用者と事業者の契約による自費のサービスとして依頼することになります。そのため、料金や対応できる内容は、事業者ごとに異なります。
外出や旅行に同行する看護師は、移動中や外出先で、本人の体調の変化に気づき、必要な対応をとる役割を担います。具体的には、体温や血圧、呼吸の状態の確認、服薬の管理、食事や排せつの介助、車いすへの移乗の手伝い、夜間の体調確認などです。たんの吸引や在宅酸素の管理、インスリン注射などの医療的なケアについては、主治医の指示の有無や事業者の方針によって、対応できる範囲が異なります。
日帰りの外出と宿泊を伴う旅行では、同行する時間も準備の量も大きく変わります。日帰りであれば数時間から半日程度の付き添いですが、宿泊を伴う旅行では、看護師が同じ宿に泊まり、夜間も含めて対応することになります。依頼を検討するときは、外出の目的と日程を早めに事業者へ伝え、実現できるかどうかを一緒に考えてもらうことが大切です。
利用を検討しやすい場面
看護師同行は、次のような外出や旅行で検討されます。
一つは、家族の行事への参加です。孫の結婚式や親族の法事、家族のお祝いの食事会など、日時が決まっている大切な行事に出席したいという希望は多くあります。会場での長時間の着席や、食事の形態への配慮、体調が悪くなったときの休憩場所の確保などを、看護師と一緒に考えることができます。
もう一つは、墓参りや故郷への帰省です。本人にとって思い入れのある場所への外出は、長距離の移動を伴うことが多く、家族だけでは不安が大きくなりがちです。
また、家族旅行や趣味の外出にも使われています。温泉旅行や観光、コンサート、展覧会など、本人が楽しみにしていることの実現を支えます。
人生の最終段階にある人が、「最後にもう一度行きたい場所」への外出を希望することもあります。このような場合は、体調の変化が起こりやすいことを踏まえ、主治医と十分に相談した上で、無理のない計画を立てることが大切です。
事前に確認する健康状態と医療的ケア
旅行や外出の計画を立てる前に、本人の健康状態と、外出中に必要になる医療的ケアや介助を確認します。事業者との相談でも、これらの情報をもとに、同行が可能かどうか、どのような体制が必要かを判断することになります。
確認しておきたいのは、病名と現在の病状、服用している薬と服薬の時間、必要な医療的ケア(在宅酸素、たんの吸引、インスリン注射、胃ろう、導尿など)、移動の方法(歩行、車いす、ストレッチャー)、食事の形態や制限、排せつの状況、認知症の有無、体力の程度などです。
医療的ケアについては、そのケアに必要な機器や物品を旅行中に使えるかどうかも確認が必要です。在宅酸素を使っている場合は、旅行中に必要な酸素の量や、宿泊先での酸素の手配、交通機関への持ち込みの条件などを調べておく必要があります。
ケアマネジャー視点のアドバイス
旅行の相談では、行き先や日程から話が始まることが多いものです。しかし、実現できるかどうかを判断するには、目的地を決める前に、出発から帰宅までの一日を時間の流れに沿って書き出してみることが役立ちます。
何時に家を出て、移動に何時間かかり、どこで食事をとり、トイレはどこで何回くらい必要になり、薬は何時に飲み、どこで休むのか。体調が悪くなったら、どこの医療機関にかかるのか。こうして並べてみると、移動時間が長すぎる、休憩の場所が足りないといった課題が見えてきます。書き出したものを主治医や事業者と共有すれば、計画を現実的な形に整えやすくなります。

主治医・交通機関・宿泊先との調整
旅行の計画が具体的になったら、主治医、交通機関、宿泊先との調整へ進みます。
最初に相談したいのは主治医です。旅行や外出が体調面で可能かどうか、移動時間や活動量にどのような制限があるか、旅行中に注意すべき症状、服薬の調整が必要かどうかを確認します。旅行先で体調が悪くなった場合に備えて、診療情報を書面でまとめてもらえるかどうかも相談しておくとよいでしょう。
交通機関の利用にも、事前の手続きが必要になることがあります。たとえばJALでは、酸素ボトルや医療機器を使う場合、ストレッチャーを使う場合などに、主治医が記入した診断書の提出を求めており、便の出発48時間前までに送付する必要があるとしています。JR東日本では、車いすで新幹線や特急列車を利用する場合、乗車の1か月前の日から車いす対応座席の申し込みを受け付けており、駅係員によるホームまでの案内や乗降の手伝いのために、事前の連絡への協力を求めています。利用する交通機関ごとに条件が異なるため、それぞれの公式の案内を確認し、早めに手続きを進めてください。
宿泊先については、バリアフリーの客室の有無、浴室やトイレの手すり、ベッドの高さ、車いすで移動できる通路の幅、食事の形態への対応などを確認します。看護師も同じ宿に泊まる場合は、看護師の部屋の手配も必要です。酸素濃縮装置などの医療機器を使う場合は、電源の確保や機器の搬入についても宿泊先に伝えておきます。
緊急時に備え、旅行先の近くにある医療機関も調べておきましょう。
料金を構成する項目
看護師同行サービスは保険外のサービスのため、料金は事業者が独自に設定しています。同じ日程の旅行でも、事業者や地域、本人の状態によって金額が大きく変わるため、この記事では相場の金額は示さず、料金を構成する項目を説明します。
同行時間・夜間・宿泊
基本となるのは、看護師が同行する時間に応じた料金です。1時間あたりの料金で計算する事業者もあれば、半日、1日といった単位で料金を設定している事業者もあります。移動時間が長い旅行では、自宅を出発してから帰宅するまでの全体が同行時間として計算されることが一般的です。
宿泊を伴う旅行では、夜間の料金や宿泊を伴う同行の料金が加わります。夜間も看護師が起きて対応する必要があるのか、何かあったときに呼べばよいのかによって、料金や必要な人員が変わることがあります。長時間の同行では、看護師の休憩や交代の扱いも確認しておきましょう。
交通費・宿泊費・キャンセル料
看護師の交通費と宿泊費は、利用者が負担するのが一般的です。新幹線や飛行機の運賃、現地での移動費、宿泊費、食事代などが、同行料金とは別にかかります。自宅から出発地点までの看護師の移動費や、旅行先から看護師が戻るまでの費用の扱いも確認してください。
旅行の場合、特に確認しておきたいのがキャンセル料です。体調の変化によって、直前に旅行を取りやめることは十分に起こり得ます。いつまでに取り消せば料金がかからないのか、当日の取り消しはどうなるのかを事前に確認し、交通機関や宿泊先のキャンセル規定とあわせて把握しておきます。
このほか、事前の面談や打ち合わせの費用、計画づくりの費用、医療機器や介護用品のレンタル料などがかかる場合もあります。見積もりを依頼するときは、旅行の行程を具体的に伝え、総額を確認してください。

相談から当日までの流れ
看護師同行での旅行には準備期間が必要です。一般的には、次の流れで進めます。
- 旅行の希望と本人の状態を整理する
- 主治医に旅行が可能かを相談する
- 事業者に問い合わせ、実現の可能性を相談する
- 面談で行程と支援の内容を決め、見積もりを受け取る
- 契約し、交通機関・宿泊先の手配と申し込みを行う
- 直前に体調と持ち物を確認する
- 当日、看護師と合流して出発する
最初は、旅行を実現できるかどうかを見極める段階です。事業者によっては、本人の状態や行程を聞いた上で、計画の見直しを提案されることもあります。
つぎに、行程表、緊急時の連絡先と対応手順、服薬の予定、持ち物のリストを、家族と事業者で共有します。交通機関の申し込みには期限があるものもあるため、日程が決まったら早めに手続きを進めます。
そして、直前の確認では体調に大きな変化がないか、薬や医療機器、診療情報の書面などの持ち物がそろっているかを確認します。体調によっては、主治医や事業者と相談し、延期や中止を判断することも必要です。無理をしないという判断も、計画の一部として考えておいてください。

事業者の選び方
旅行や外出の同行を依頼する事業者を選ぶときは、次の点を確認しておきましょう。
最初に確認したいのは、旅行への同行の経験と対応範囲です。日帰りの外出には対応していても、宿泊を伴う旅行や遠方への同行、飛行機での移動には対応していない事業者もあります。依頼したい行程に対応した経験があるかどうかを聞いてみてください。
次に、医療的ケアへの対応です。本人に必要な医療的ケアに対応できるか、主治医とどのように連携するのかを確認します。旅行中に必要な医療機器の扱いに慣れているかどうかも、確認したい点です。
さらに、緊急時の対応です。旅行先で体調が急変した場合の対応手順、近くの医療機関を事前に調べてもらえるか、家族への連絡の方法を確認します。事業者が賠償責任保険に加入しているかどうかも聞いておきましょう。
最後に、料金と契約の条件です。同行料金と実費の区別、キャンセル料の条件、延長の扱いが書面で示されているかを確認してください。旅行は予定どおりに進まないことも多いため、変更や中止になった場合の扱いは特に丁寧に確認しておくことが大切です。
看護師同行の事業者を探す
「わたしのケア」では、旅行や外出の同行に対応している看護師同行の事業者を、地域やサービス内容から探すことができます。旅行の希望と本人の状態を整理できたら、対応範囲や緊急時の体制を見比べ、条件に合いそうな事業者に相談してみてください。
掲載されている料金、対応地域、利用条件は変更されることがあります。問い合わせの際に、最新の内容を事業者へ直接確認してください。
参考資料
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投稿者プロフィール

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寺岡 純子
看護師・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。産業ケアマネジャー3級。長年、看護・介護業界で、高齢者本人と家族への支援やケアマネジメントに携わる。現在は、居宅介護支援事業所の運営、介護・福祉事業者を対象とした研修やBCP支援、専門記事の執筆・監修などを行っている。
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